暫く進むと、また小さな鳥居と御社があった。今度はこの御社がどのようなものなのかを推測する手掛かりはなく、地元でひっそりと信仰されているもののようだ。
奥には剣と、とても小さいが黄金色の観音様が祀られている。遠野の御社としては、特に珍しくも無い光景だが……。
今でも定期的に人が訪れているのだろうか。内部は小奇麗に整えられている。
尤も、今は俺が付けた足跡以外に人が訪れた形跡はない。じっと春が来るのを待っている。
雪の中から顔を出す、夫婦のような御神木に見送られてさらに先へ……。
強い風が通り抜ける土地の支配者は、人間ではないのかもしれない。
牛舎の周辺には数頭の牛が屯していたが、俺の姿に気付いた一頭の牛がすぐ近くまで寄って来た。
牛は外部からの刺激に敏感なのか、いつも俺が側を通り掛かるとこちらをガン見して来たり、近くまで駆け寄って来たりする。かわいいが、時々ちょっと怖かったりもする。
牛も見慣れない通行人に警戒しているのかもしれない。あまり彼らの邪魔をしないように、そっと通り過ぎよう。