遠野放浪記 2014.03.22.-02 三光坊の墓 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

足ヶ瀬から釜石街道を外れ、俺はさらに雪深い遠野の片田舎を走っていた。


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集落の奥に分け入るに連れ、道は雪に閉ざされて益々か細くなる。

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そんな道端に、小さな御社が立っているのを発見した。木陰で雪に埋もれ、ともすれば見逃してしまいそうになるその御社には、三光坊の墓と銘打たれていた。


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この御社には、かつて仙人峠にあった仙人堂の御神体が祀られているという。

御神体はある年の大雨により青笹まで流されてしまい、その後暫くは上郷の「おせんどから」という場所に安置されていたのだが、やはり仙人峠にあるべき御神体なのだからと、再び峠に戻された。

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「おせんどから」というのが、他でもないこの三光坊の墓がある場所なのだという。一説には、仙人峠の御堂に対し、この小さな御社が里宮の役割を果たしていたのではないかとされている。

「おせんど」は「御銭堂」と表記されるが、本来は「御仙堂」が正しいのかもしれない。

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仙人堂は今は無く、また三光坊というのが誰のことなのかもわからない。謎は謎のままだ。

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さらに集落の奥に分け入る。このあたりまで来ると家も少なくなり、巨大な石碑などが次々に姿を現す。

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人ひとりがやっと通れるだけの細い道を、当て所無く歩く。幸い、時間だけはたっぷりある……。

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幾筋もの小川を越え、次第に木々が深くなって来る。葉は全て落ちているが、舞い散る雪に遮られて視界はあまり良くない。

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やがて道すらなくなり、行く手には寂しい森と白い雪の壁だけが立ちはだかった。

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この先へ進むのは最早絶望的にも思えるが、次の目的地はこの雪の向こうにある。覚悟を決めて、深い雪に足を踏み入れる。