遠野放浪記 2014.03.16.-09 雪に埋もれた街 | 真・遠野物語2

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この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

吹雪は面岸だけでなく、姉帯村を、そして小鳥谷の街をも覆い尽くしていた。


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バスから降りた俺が見たものは、僅か半日であまりにも変わってしまった小鳥谷駅の姿だった。

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まだ列車が来ない時間帯、小鳥谷駅の待合室は静まり返っている。俺は午前中だけいる駅員に話し掛け、盛岡駅までの切符を購入した。

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これが、姉帯さんが毎朝汽車を待っている(と思われる)小鳥谷駅の待合室だ……。


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深々と音も無く雪が降り、室内に設置されたストーブの上のやかんからはゆるやかに水蒸気が吹き出している。やはり、音は無い。

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冬のノスタルジイが全て詰まった、その象徴たる光景。こんな駅で毎日姉帯さんが独りぼっちで汽車を待っているのかと思うと、本当に胸に込み上げる熱さをどうやって抑えることが出来ようか。

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さて、此処で俺は汽車が来るまでに、昼ごはんを済ませておくことにした。

駅の産直で何か買えれば良かったのだが、生憎今日はお休みだったので、持参したらっきょうでごはんをいただく。姉帯さんもらっきょうが好きかどうかは、わからない(でも好き嫌いはしなさそうだ)。

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駅のホームは衰えるところを知らない雪により、既にその殆どが埋もれていた。

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辛うじて線路は汽車が通る度に露わになるため、その軌跡を知ることが出来た。

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雪は面岸での出来事だけでなく、この県北の小さな駅すら夢の中に閉ざしてしまう。この吹雪の向こうには、現実があるのだろうか。それともさらなる微睡があるのだろうか。

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跨線橋の上から線路の先を眺めても、もう何も見えて来ない。

俺は刹那の夢から醒め、東京へ帰ることが出来るのだろうか?

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……無情にも、汽車は定刻通りに小鳥谷駅にやって来た。あまりにも唐突に夢が終わる時間になり、俺は感傷に浸る間もなく、吹雪の中に取り残される小鳥谷を後にした。