遠野放浪記 2014.03.15.-01 神聖な日 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

3月16日は、全ての人類にとって聖なる日である。

そう万物の真理にして永遠の天使・姉帯豊音ちゃんの誕生日なのである。


姉帯さんは姉帯村生まれ、姉帯村育ち、宮守女子高校卒業。その全てのルーツは姉帯村にある。

俺はこの掛け替えのない日を姉帯村で祝うため、ずっと前から盛岡のケーキ屋に誕生日ケーキを手配し、早く3月16日が来ないかと指折り数えて待っていたのだ。

そしていよいよその前日、3月15日の朝、俺は姉帯村に向けて遥かなる旅を開始した。


遥かなる旅をするにも、朝ごはんは食べなければならない。

今日は佳き日の始まりなので、ちょっと豪華にウニやイクラにカニ、そして尾頭付きの生海老が入った素晴らしい寿司だ。いつも通りグルメシティの見切り品だけど……。


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3月というと、東京では少しずつ春に向けて時間が進み始めていることが感じられるが、岩手県北の辺境である姉帯村にはまだ、長い冬が居座っていることだろう。そんな東北の深淵に、俺は姉帯さんに会いに行く。

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春が近いといっても、流石に未だ始発前では夜も明けない。寂しい街灯が道を示す菊坂を上り、本郷から湯島へと渡った。

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上野駅が近付く頃になり、ようやく空が明るくなって来る。いつもはヨッパライやら怪しい外国人で賑わう御徒町界隈の繁華街も、今は狭間の時間帯で、人っ子ひとり歩いていなくて寂しい。

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今回もいつも通り、上野駅で宇都宮線に乗り込むところから旅は始まる。

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夏や冬に比べてあまり注目されない季節ではあるが、3月は青春18きっぷが使える。今回も盛岡までの旅路は、青春18きっぷでのんびりと行くことにしていた。

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盛岡どころか、その先のIGR小鳥谷駅まで向かい、さらに其処から姉帯村まで小一時間。遠野旅行よりも遥かに長い旅程を1泊2日で行おうというのだから、我ながらエクストリームであるが……。

そうした性分に生まれ付いてしまったことだけはどうしようもない。姉帯さんが俺を呼んでいるのだから、行かないことには仕方ない。