番外編 らくしょーの臼澤探訪記19 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

次の目的地へ向け、我々は大槌を流れる小鎚川を遡ることにする。

街の中心と川が交わるあたりには、小鎚神社という大きな神社がある。


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神社の前では引っ切り無しにトラックが行き交い、盛んに工事が行われているが、境内は少しだけ平和な空気が流れているように感じられた。

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参道の階段を上ると、本殿を擁する小奇麗な境内に出た。

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立派な本殿は、大槌の街の鎮守だ。元々は9世紀頃に勧請されたという、非常に歴史が古い神社。
あの日、街を飲み込んだ海は勢いそのままに鳥居の下まで押し寄せて来たが、奇跡的に本殿への被害らしい被害は無く、またその後の火災からも、地元民の懸命な消火活動によって守られた。

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この場所に逃げて助かった人も大勢いただろう。神社が持つ力が守ってくれたのかもしれない……。


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神社と共に長い歴史を刻んて来た神輿も、変わらない姿で神輿殿に収められている。


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境内には他にも、小さな御社や石碑がたくさん鎮座していた。


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このあたりの風習なのだろうか、御社の前には五円玉の形をした石碑が置かれている。

五円は「御縁」に通じるため、御賽銭箱は常に参拝者が投げ込んだ五円玉で満たされているわけだが、五円玉の形の石碑をそのまま祀ってしまうのは、岩手県内の他の場所でもちょっと見たことがない。


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いろいろな神社や神様の名前が刻まれた石碑がある光景は、岩手らしくてほっとする。


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山神の石碑には、他ではあまり見たことがない女神の姿が刻まれていた。しかし、遠野三山の伝説をはじめ、山神は一般的に女神なのだ。富士山に宿るのも、木花咲耶姫だったりする。

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岩手らしさ、大槌らしさが確かに残っている小鎚神社がこの場所にある限り、大槌人の誇りは失われまい。何もなくなってしまった街にも、7年前の懐かしい空気は間違いなく感じられる。