遠野放浪記 2014.02.15.-04 新しいオアシス | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

仙台駅に到着した俺は、一旦改札を出て駅ビルの地下にあるSweet Ovenという店に塞さんのケーキを受け取りに行った。約束の到着時刻より一時間以上も遅れてしまったのに(前以て連絡はしておいたが)、店員さんは笑顔で対応してくれるどころか、これから岩手に向かう俺の心配までしてくれた。

少なくとも後4回はこの店にケーキを発注することになるので、初回でとても良さそうな店であることがわかって非常に安心した。


1


ケーキを大事に抱えた俺は、地下の改札口からホームに上り、小牛田行きの列車に乗り換えた。

2


仙台以北の東北本線もダイヤが乱れていたが、幸い今ホームにいる小牛田行きの列車はすぐに発車するみたいで、多少は遅れが取り戻せそうだ。

3


雪はどうにか小康を保っているが、空は相変わらずどんよりと暗い。あの絶望的な状況の東京を抜け出して来たからか、これくらいの空模様になる日は冬の東北ならば普通にあり得るのだが、この先の旅路からも不安が拭えない。

4

5


雪に埋もれた宮城県北の大地。見えるものは白と灰色、そして僅かばかりの黒のみだ。

6


時折小さな街が車窓に顔を見せてくれると、何だか人の暖かみに救われたようで安心する。

7

8


このような空の下でも、列車は小さな街の駅に立ち寄り、そしてその土地に住む人が家に帰って行く。当たり前の光景を、列車は晴れの日も雨の日も、そして雪の日も健気に繰り返して来た。

9


灰色の絵の具で塗り潰したような重苦しい空。いつもならばこのような天気も楽しめるのだが、今日は不安が募るばかりだ。

10


遠くの山々は直に見えなくなってしまい、地上と空の境界は一色に飲み込まれて行く。

11


ようやく、県北の要衝である小牛田駅に到着する。いつも以上に長い、長い旅路である。

12


週末パスの効力は小牛田まで。この先は宮守まで、実費で列車に乗ることになる。