思っていたよりも暖かい1月の夜明け前、俺は目を覚ました。
宇迦神社で宿を借り、今日は東京へ戻るのだ。
朝ごはんは暗闇の中、持参したごはんと民話漬 野菜ふりかけでいただく。みじん切りにされた野菜の漬物がごはんと良く馴染み、とても美味しい。混ぜごはんにもおむすびにも出来そうだ。
遠野の街はまだ夜の闇に包まれ、出歩いている人はひとりもいない。街灯だけが寂し気に光っている。
遠野駅には始発列車を待つ人が数人いたが、やはり夏と比べるとその出足は寂しい。
明るくなれば地元民で賑わう駅も、夜明け前は静寂に包まれている。
駅舎の中は暖かく、生き返る思いだった。
始発列車が来るまで時間があるので、待合室で暫く待つことに。
駅のミニコーナーでは「遠野の正月」の展示が行われており、オシラサマやいろいろな縁起物が所狭しと並べられていた。
やがて始発の6時18分が近付き、俺は荷物を纏めてホームに出た。
ようやく白み始めた空の下、雪煙を上げながら始発列車が到着した。
釜石を一時間前に出発し、険しい山岳地帯を越えて来た汽車はすっかり凍り付いている。
これから日が昇れば、幾分かこの寒さも和らぐだろう。
俺は汽車のドアを開け、長い岐路に就いた。