番外編 ダルくない小瀬川探訪記15 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

花巻の果ての街は、目に見える景色から感じ取れる空気まで、全てが初めての体験だった。


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知らない街を道から道へ、最早目的地に辿り着けるかどうかさえも大した意味を持たず、この時間が俺の全てであるような感覚になって来る。

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道端に、人知れず秋の花が咲いていた。

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何時の間に、燃えるように色付いた山が目の前に近付いている。

このあたりまで来ると、実際に定住している人はそう多くなく、農業を営む人や温泉などで働く人が殆どのようだ。

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秋の空に見送られ、疎らながらこの土地に根差す建物に別れを告げる。

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再び道は、道なき道へ。

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もうどの道が正しいのかもわからない。俺は気の向くままに、田園の間を縫うように延びる畦道を歩いて次の風景を目指した。

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もうそろそろ昼が近い。時計を見ていないので正確な時間はわからないが、きっと俺の旅も終わりが見えている頃合いだろう。

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やがてこの道すらも、森に遮られて無くなってしまった。

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水路に架かる橋を渡って、再び街に向かう道を探す。今はこの人が造ったモノが、俺を導く道標になってくれる。

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山の街ともお別れが近い。

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明るい日差しに照らされて、次第にまた家々が小さくなって行く。俺が今日限りで此処を去ろうとも、この小さな街は明日も明後日も、同じ時間が流れるのだろう。