列車は白石、仙台を過ぎて宮城県北へ向かう。
眩しい西日を反射してキラキラと輝く鳴瀬川を渡り、県内最後のターミナルである小牛田へ。
まだ暖かい季節とはいえ、夏に比べれば日が傾く時間はずっと早い。大地は黄金色から、燃えるような真紅に染まろうとしている。
小牛田を過ぎると、後は岩手に入るまで広大な田園地帯の中を只管北上する。
東北の原点が見えるような、東京とはスケールからしてまるで違う風景である。
視界を遮るような何かも、街の姿すらも無く、田園の中を一本の道だけが走っている。街から街へ、季節から季節へと旅をする人の道だ。
遥か道の先には、山に寄り添うように小さな街があるのが見える。この道の終着地なのか、それともさらに先があるのか……。俺がまだ知らない旅が其処にはあるように思える。
一ノ関で列車を乗り換え、いよいよ旅は夕暮れの岩手に突入する。平泉や前沢といった大きな街に見送られ、列車は夜へと進んで行く。
太陽は最早視線と同じ高さにまで下って来て、濃い色の空と真紅の大地のコントラストが鋭利になる。
此処からの僅か30分足らずのうちに、空は目まぐるしく表情を変え、まるで消え行く自分の姿を強烈に印象付けるかのように太陽は狂いながら燃え尽きる。
大地は暗い影に覆われ、一日の最後の光をただ黙って見上げている。
その閃光のような秋の黄昏も、やがて山の向こうへ消えて行った。


