2013年9月21日。非常に穏やかな朝が来た。
暑くも無く、寒くも無く、外は秋の太陽の光に溢れている。旅に出るには最高の朝だ!
支度もそこそこに済ませた俺は、昨日のうちに買っておいたグルメシティの見切り品――広島風お好み焼きとバッファローチキンを朝ごはんに食べることにした。
非常に辛いバッファローチキンと、ほのかに甘い濃厚なソースがとても相性良し。大変満足な朝ごはんである。
おなかも満たされていざ出発を……と家から外にまで出たところで、忘れ物をしていることに気付いて引き返す羽目になった。支度はそこそこにではなく、万全に済ませなければならないということだ。
結局、乗りたかった列車には乗り遅れてしまったので、俺は家で少しゆっくりしてから出発することにした――最初の列車を逃すと、遠野到着はおよそ2時間も遅くなってしまうのだ。
外はもうすっかり朝。ひんやりとした空気は、もう色を失って太陽の光に溶けてしまった。
この空気をやらかしてしまった自分への戒めに、パティのペダルを漕いで上野駅に向かう。
この時間だと広小路には既に人が多いだろうから、裏道の池之端を通って行くことにした。
本郷弥生の交差点にも既に人が多いが、東京大学の裏手はやはり静かだ。
不忍池に出るまでは車の通りも殆ど無く、落ち着いて駅に向かうことが出来る。
今までは最短距離を走ることばかり考えていたが、他にこんなに良い道があるなんて気付かなかった。
決して広い道ではないのだが、誰もいないことと、朝の眩しい日差しがとても開放的な雰囲気を作り上げている。
東京大学を過ぎると、急に高い建物が多くなり、一気に上野に近付いていることが感じられる。
しかしそんな中にも、古い一軒家や御稲荷様が鎮座していて、すぐ手の届く距離にあるところに、高層ビル群と対比して“下町”という言葉の意味を非常に強く感じる。
ここいらで表通りに出れば、其処はもう不忍池の目の前だ。
池は太陽の光をいっぱいに浴びて輝き、そしてまだ充分に深い緑の中を、大勢の人が闊歩している。
コンコースにも既にかなり人が多い。
尤も夜になればさらに比べものにならない雑踏がこの場所に出現するのだが、いつもの早朝と比べれば充分な混み具合だ。
今回は行きの目的地は遠野だが、帰りはとある目的があって別の駅から汽車に乗る予定なので、取り敢えず片道切符を購入。別に往復で買っても金額が変わるわけではないし、長期間滞在する場合は有効期限切れの心配もあるので、実は往復切符システムのメリットは殆ど無い。
間抜けな出遅れで出発から躓いてしまったが、此処から巻き返して行こう。