遠野放浪記 2013.09.15.-08 米の通り道 | 真・遠野物語2

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この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

琴畑から駅前への帰り道。様子は昨晩とはすっかり変わってしまった。


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途中で、いつもの地名案内板に「米通(こめどおり)」という名前を発見した。

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米通といえば、確か新しく登録された遠野遺産があったな。

当初の目的を果たせなかった代わりと言っては何だが、米通まで行ってみるか。

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米通への分かれ道は、大きな金毘羅様の石碑が目印。此処からまた道の雰囲気は大きく変わる。

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ん……何だか家が見えなくなったなw

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これはもしかして、米通とは琴畑に近い性質を持った街なのではなかろうか……。

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分かれ道を過ぎてからというもの、道からは人の気配が無くなり、勾配も少しずつきつくなって来た。

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これは間違いない……山に向かうときの道の様子だ。

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重い鈍色の空の下で、俺は早くも「大人しく街に帰れば良かったかも……」と思い始めていた。

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しかし此処まで来てしまった以上、引き返すという手は最早ない。米通で何かを発見するまで――或いは何も発見出来なくてもそれはそれで良いが――この道に踏み込んだ責任は取ってやるぜ。

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暫く上って来たところで、道は米通沢という小さな川と交差した。

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こうして川の名前にもなっていることから、米通という土地が重要な位置を占めていたことが伺える。

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昔は今とは比べ物にならないくらい貴重だった米を運ぶ際の、重要な中継地点だったとか……。

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今でも岩手県内を筆頭に、全国におよそ100人程、米通さんという人がいるそうである。

この米通の出自で、米を扱う仕事の中でも特に重用されていた一族の末裔だと思って間違い無いだろう。

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山に近い土地の中で僅かにある平地に、黄金の稲穂が頭を垂れている。

晴れてさえいれば、もっと素晴らしい光景に出会えたに違いない。

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まあ、とはいえこの孤独な旅路、雨の中で独り歩くというのも悪くは無い。

初めて琴畑に向かうときにも同じようなことを感じた。

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小一時間歩いただろうか、人の生活の気配など何もなかった山道に突然、家々が寄り添うようにして立っている姿が現れた。

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どうやら米通に辿り着いたみたいだ。

初めて訪れる、山に近い小さな集落。此処はどんな街なのかな?