遠野放浪記 2013.09.15.-02 バック | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

取り敢えずは恩徳に行っても仕方ないので、琴畑まで引き返すことに。

此処まで結構な道程だったので、元の場所に戻るだけでも大変そうだ。


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雨はまだ降っていないが、大気はじっとりと湿り気を帯び、目に見えない何かと共に肌に纏わり付いて来る。

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この微かな違和感はひと言では形容し難い。

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普段の生活の中で、こんな場所を歩く人がどれ位いるだろうか。

特に東京で暮らす人の大多数は、日本にこのような場所があることも知らずに老いて行くのだろう。

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やがて薄暗い森を抜け、少しだけ日が当たる伐採場に戻って来た。

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人が山と共に生きることを選んだ結果、出来上がった道。この先には同じくして出来上がった小さな集落がある。

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新山(しんやま)高原から最初の一滴が流れ出す琴畑川の、小さな小さな名も無き支流。このような存在が無数に集まり、やがて琴畑という遠野で一番美しい川に変わる。

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彼の川の、このような表情を知っている人がどれ程いるのだろう。

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遠野の奥には人知れずこんな光景が展開されているんだということを、僅かでもお伝え出来れば嬉しいと思う。

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また道は暗い森の中に入り、沢から零れた水と何時ぞやの雨によってぬかるんだ泥の上を越えて行く。

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帰りは幸い、下りの方が距離が長かったので、割合楽に琴畑まで戻ることが出来た。

靴は須く泥まみれになってしまったが……。

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残っている道は一本だけなので、流石にこれ以上迷子になることも無いだろう。