寺沢高原の頂上まではだいたい12kmくらい。遠野駅からふるさと村に至るのとほぼ同じくらいの距離、ずっと坂道が続くわけだからかなり大変だ。
幸い傾斜は緩やかだが、蒸し暑さと相俟って歩く毎に汗が噴き出して来る。
周囲の木々は深いが、視界の全てを覆ってしまう程ではなく、太陽の光は遍く足元に届いている。
深い山の中にも人が暮らしている風景を見ると、ほっとすると共に人間の逞しさを感じずにはいられない。
ところで、上宮守に辿り着くまでは道中ずっと宮守川と一緒だったが、高原に向かう道に入ってからは、代わって寺沢川と一緒に進むことになる。
寺沢川はずっと一緒に並走してくれるわけではなく、時々視界に現れては俺を高みへと導こうとしているようだ。
川がある場所は心癒されるもので、厳しい筈の坂道を上る脚も少しだけ重くならずにいられる。
出発から小一時間、まだゴールは見えて来ない。