遠野放浪記 2013.05.25.-03 青笹 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

俺は中沢から釜石街道に抜けるために、メインストリートを外れた水田地帯の中を走って行くことにした。


1

2


やはり水田は青空の下でこそ一番美しいと思うので、この空模様は残念でならない。

尤も、遠くの方では雲が切れ始めているため、直に晴れて来ると思うのだが……。

3


水鏡と春の花に囲まれた、地元の人しか通らないであろう農道を抜ける。

4


農道は釜石街道まで一直線。松崎町にもこんな道があるが、カーブも無く兎に角真っ直ぐに走るのは気持ちが良い。

5

6


周囲に視界を遮るものも無いので、街や遥かな山々まで綺麗に見渡せる。

7

8

9


このあたり一帯は、釜石街道に向かって非常に緩やかだが下り坂になっており、水田もよく見ると段々に、低い方へと向かっている。

10

11

12


水田の中に人の姿は見掛けない。粗方田植えが終わり、今日はゆっくりとした朝を迎えているのだろうか。

13

14


これだけ広い田圃だと、夜はカエルの合唱がさぞ賑やかだろう。晩春の風物詩とはいえ、水田のすぐ近くに暮らす人たちが不眠症になってしまわないかが心配だ……。

15

16


水田の向こうに一角だけこんもりと木が生い茂っているのが見える。

ああいう場所には何かがある……とすぐに深読みするあたり、俺の頭は充分に遠野に染まっている。

17


心なしか、空は夜明け後よりも明るさを増している。このまま順調に晴れてくれると嬉しい。

18

19

20


ゆっくりと、しかし確実に、風景の境界線が明確に現れてきた。雲の隙間からは鮮やかな青が見え隠れしている。

21


水鏡に輝く光も、次第にその強さを増してきた。

22


初めて迎える晩春の朝。

今日も遠野は良い一日になりそうだ。