遠野放浪記 2013.05.02.-10 夕景 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

虹は消え、太陽は地平線目掛けて静かに落ちていき、岩手に夜が忍び寄ってくる。


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沈む直前のぎらぎらとした西日――俺が覚えている5年前の姿とは違う。

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春になると出現する湖に映るその姿は、次第に細く長くなっている。

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此処に来て少し雲が出てきたようだ。

先程まで虹が出ていたということは、天気はあまり安定していないのだろう。雨にならなければ良いのだが……。

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雲が出て、背後からは夜が迫る何となく不安な時間帯。

それでも岩手の人たちは、暖かい春を迎えるための準備を欠かさない。

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トラクターの轍がミステリーサークルみたいになっているところがある。

コレ、どうやって引き返したんだろう……。

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この調子ではあの日見た夕景に再び出会うことは難しそうだが……しかしこのゆるやかに一日の終わりに近付いていく時間帯を旅先で迎えられることが既に、俺にとっては嬉しい。

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列車は北上川の支流を幾つも越え、少しずつ花巻に近付いている。

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俺の知らない街に住む、俺の知らない人たちが、等しく夜を迎えようとしている。

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釜石線以南では最後の支流である豊沢川を越え――土手に咲き連なる、闇に染まりつつある桜が堪らなく綺麗だ――列車は無事に花巻駅に到着した。

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次に乗る列車は、快速はまゆり。一本前の普通列車から2時間近く経っているし、かなり混むだろうが……そこは覚悟して乗り換えるしかない、か。