遠野放浪記 2013.01.13.-09 重力支配からの解放 | 真・遠野物語2

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この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

高清水の過酷な雪道はまだ続く。

もうかなり登って来た筈だが、森林地帯の終わりすら見えてこない。


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山頂に近付くに連れ、積雪もかなり激しくなってくる。腰の高さくらいまで吹き溜まっている場所がザラで、比較的暖かかった年末に比べてかなり厳しい。

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一応、これ以上は厳しいと感じたらいつでも引き返す覚悟は決めているのだが、そのタイミングは難しい。

まだ大丈夫、まだ大丈夫と無理を重ねるうちに、取り返しの付かない深みに嵌る危険もあるから……。

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やがて、見覚えがある小さい橋に差し掛かった。

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麓から長かった森林地帯が終わり、ようやく牧場地帯に突入。

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一気に視界が開け、遥か遠くの山々も姿を見せ始めた。

此処まで来れば、展望台まで後ひと息!

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……が、その前には森林地帯とは比べ物にならないほど深い雪が立ちはだかっていた。

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見ての通り、此処には風を遮るものが一切存在しない。山肌に雪は積もるだけ積もる。そしてそれは人間に限らず、山頂を目指す全ての意思をへし折ろうと襲い掛かってくる。

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長い道程を経てやって来た旅人を待つのは、深い雪と猛烈に吹き荒れる冬の風のみ。

その現実に慈悲など微塵も存在しない。

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まだこんな道が数百メートル続く。

此処で心が折れて引き返す連中も多いだろうが……襲い掛かる困難が大きければ大きい程、挑む価値があるというものだ。すぐに乗り越えられる低い壁、裏技で簡単にクリア出来る壁に意味なんかあるか?

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ただひたすらに刺激が欲しい。これに打ち勝ったら、いったいどんな光景が見られるのか?

モチベーションはそれだけで充分満たされる。

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暫く歩くとようやく道がフラットになってくる。急な上り坂が終わればしめたもので、幾ら積雪が厳しかろうと平らな道ならば歩くのに全く苦労は無い。

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すると誂えたようなタイミングで、俺の登頂を歓迎するかのように行く手に柔らかな太陽光が……。

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やはり天気予報の通り、時間が経つに連れて晴れ間が出て来るようだ。

綾織を出発した際には微妙な空模様だったので心配していたのだが、このまま天候が良化してくれれば望み通りの景色が拝めそうだ。