気のせいか冬前から排気音がおかしくなっていいましたが
ふと掛かったばかりのエンジンの下を見ますと、
異常な量の水蒸気が吹き出しています。
うひゃー、これマフラー破れてる!
普通の車ですと直列4気筒などのエンジンですので
排気管の状態を見るのも慣れているので簡単なのですが
2CVは水平対抗2気筒というわりと珍しいエンジンなので
排気管の取り回しがちょっと複雑と言うか勝手がちがい、
点検がお座なりになってしまったのはあるのです。
車体をリフトアップして下から覗くと、
アンダーパネルがエンジン全体を覆っているので
これを外すと一気にいろいろな物が目視できました。
ああ、排ガスバンバン漏れてるよ…。
左右気筒から伸びる排気管は、エンジン直下で
円筒形のセカンダリーマフラーに接続されます。
このセカンダリーマフラーが破損してるようです。
接続のクランプを外してマフラーを下から外します。
おお・・・見事に円筒形の蓋部分が吹っ飛んで
完全に排ガスが大気開放になっている…。
ここまで破損が進んでいると通常部品交換ですが、
ここで重大問題が発生、とオーナーより報告です。
2CVの正規日本仕様はセカンダリーマフラーの中に
排ガス浄化用の触媒が入っているのですが、
本国仕様のものには触媒は入っていないそうです。
そして、日本仕様のマフラーは、既に、絶版…!
このままでは2CV、車検、通りません。
そこで相談の結果とマフラーの状態を見て、
直せないような所は逆にしっかりとしていたので、
穴を塞いで補修して使うことにしました。
そして、今回私は作業を教えるほうに回ります。
店に転がっていたアルミの板から
蓋になる部材の展開図を描き、グラインダーで切って
ハンマーで叩くと、茶筒の蓋のようなものが
だんだん出来上がってきました。
おお、何かそれらしい物ができていく!
細かい部分は重ならないようにヤスリで修正し
それをブラインドリベットで取り付けしていきます。
なんだか中世の鎧みたいになってきた…。
穴はもう一個あったので、それも部材でふさぎ
隙間は市販のマフラーパテを詰めておきました。
隙間はかなり小さくて済んだので、
排気圧でパテが飛ぶこともないでしょう。
そして車検と言えば、
高温になる可能性のある触媒の周辺には
火災防止のために遮熱版を取り付ける必要もあります。
実はこの車体には一切そのような物が付いていないのだが
さまざまな写真の判定と状況から考察して、
恐らく新車の時はマフラーの外周にグラスウールを巻き、
その上から金属板も巻いてバンドで固定していたようです。
せっかくなのでそれも作ってもらおう!
まあ茶筒の蓋から考えたらもう楽勝です。
ステンレス板を叩いて円筒形に成型してから、
グラスウールごとホースバンドで巻いて固定しました。
おい何だ、かっこいい物ができたよ!見えないけど(笑)。
試運転の結果排気漏れは治まり、運転状況も良好です。
唯一本題からは外れますが、一緒に脱着した
排気温度センサーが寿命を迎えてしまったようで、
それの修理をしておかなくてはなるまい。
しかし何より苦労したのは、2CVの日本仕様というと
こういう独自の仕様に関する資料が
ほとんど存在しないというところでした…。
ヘインズの整備マニュアルは買ってもらっていましたが
触媒の話も遮熱版の話も、温度センサーの話も
全く記述がないのです。
インターネットでも断片的な話題が散見される程度で、
それを総合して何となくこの結果になりました。
ですから構想から作業まで、実は何ヶ月もかかってるという。
ああ、資料があるって、素晴らしいことだなあ!