Where was I now?
Gripping the receiver, I raised my head and turned to see what lay beyond the telephone booth. Where was I now? I had no idea. No idea at all. Where was this place? All the flashed into my eyes were the countless shapes of people walking by to nowhere. Again and again, I called out for Midori from the dead center of this place that was no place.
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僕は今どこにいるのだ?
僕は受話器を持ったまま顔を上げ、電話ボックスのまわりをぐるりと見まわしてみた。僕は今どこにいるのだ? でもそこがどこなのか僕にはわからなかった。見当もつかなかった。いったいここはどこなんだ? 僕の目にうつるのはいずこへともなく歩きすぎていく無数の人々の姿だけだった。僕はどこでもない場所のまん中から緑を呼びつづけていた。
※下線太字部分は原著では傍点で強調されている。
■「dead center」=「ど真ん中、ちょうど中心」
『ねじまき鳥クロニクル』の英訳は、ブログを2年以上続けてきて(空白期間が長すぎではありますが)、まだ全体の1.5%くらいしか進んでいないことに最近気づいて、愕然としました。
春樹さんは来年の夏に『1Q84』の「BOOK3」を発表予定だそうですが、絶対それより早く終わることはありえません。
そこで、ちょっと「完成」の擬似体験をして自分を励まそうと、『ノルウェイの森』を採り上げてみることにしました。『ノルウェイの森』のラストの文章であると同時に、この小説の最も印象的な文章の一つです。
ちなみに僕は『ノルウェイの森』(日本語版)のハードカバーを何セットか持っていますが、「ブックオフ」で105円で購入した物も含まれています。しかし最近は、『ノルウェイの森』の映画化、『1Q84』のヒット、「エルサレム賞」の受賞などの影響からか、ブックオフでもあまり見かけず、あっても105円ではなく半額程度の500円とか、600円でしか見かけないですね。もちろん店にもよるでしょうが。22年も前に出版された本なのに凄いことです。
それにしても、日本語も簡潔ですが英語も同じくらい簡潔ですね。簡潔ではあるけれど、力強く、そして物悲しい……。
「僕はどこでもない場所のまん中から緑を呼びつづけていた」は、『世界の中心で、愛をさけぶ』のタイトルを考えた人(片山恭一さんではなく編集者らしい)の頭に強く残っていたから生まれたとにらんでいるのですが。ハーラン・エリスンの『世界の中心で愛を叫んだけもの』よりも。
【参考サイト】 「スペースアルク」
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【参考文献】
◆村上春樹
『ノルウェイの森』下巻 (講談社)
---P258
◇"NORWEGIAN WOOD" Translated from the Japanese
by JAY RUBIN (VINTAGE INTERNATIONAL)
---P293
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