ロシア映画界で活躍するウクライナ人プロデューサーが、チェルノブイリ原発事故の悲惨さを描いた『チェルノブイリ1986』

事故の当事国ロシア制作ではあるが、Fukushima 50 と比して、格段に事故の深層に切り込んでいる。

映画『チェルノブイリ1986』オフィシャルサイト


しかし、事故の当事国・ロシアと敵対するアメリカのTV局HBOが、2019年に制作した『チェルノブイリ』は、ロシア政府に遠慮することなく真相を抉り出している。

フクシマ原発事故についても、真相に迫る映画&ドラマが制作されることを期待したいところだが、何処の国なら日本政府に遠慮なく制作できるのだろうか?


 Yahoo!ニュース・現代ビジネス 最終更新:5/6(金) 12:37
「チェルノブイリ原発事故」の映画を作ったウクライナ人プロデューサーの思い
【この映画をプロデュースしたのは、自身もチェルノブイリ事故の現場にいたというアレクサンドル・ロドニャンスキー氏。長年ロシアで数々の映画を手掛けてきた彼はウクライナ人だ。ウクライナ侵攻が始まった日のことを、彼はインスタグラムにこう記している。

 2月24日の早朝、成人した息子がキーウから電話をかけてきて、衝撃と落胆のこもった声で話した。「始まったよ……」と言いながら、ミサイルの音を聞かせてくれた時は信じられなかった。<中略>私の生まれ故郷であり、親戚や友人、同僚が住み、両親や祖父母が眠るキーウが、私がこの20年間、家族や友人とともに暮らし、仕事をしてきた国のミサイルに襲われるとは想像もできなかった。私は生まれてからずっとロシア語を話している。そして、今でも信じられない。<中略>昨日初めて衝撃を受けた後、私は自分のインスタグラムに、戦争の最中に目覚めたすべての人々のために、喪に服すと書いた。】


 南日本新聞・ORICON NEWS 2022-05-06 11:28
映画『チェルノブイリ1986』被ばくし真っ黒に焼け焦げた消防士たちをリアルに再現
【1986年4月26日、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国プリピャチのチェルノブイリ原子力発電所で起きた爆発事故で、爆発直後に現場に急行した消防士たちの苦闘や避難民たちの混乱ぶりなど、一般市民の視点からリアルに映し出した、映画『チェルノブイリ1986』が本日(6日)より、東京・新宿ピカデリーほか全国で公開。その本編より、被ばくし真っ黒に焼け焦げた仲間たちがリアルに再現されている衝撃的なシーンが解禁となった。

【動画】映画『チェルノブイリ1986』恐怖の惨劇シーンが解禁


 チェルノブイリ原子力発電所で爆発事故が発生したことを知った主人公のアレクセイは、明け方、急いで現場に到着すると、通常の防火服を着たまま消火作業にあたる大勢の消防士たちが、放射性の火傷を負い、あちこちで嘔吐しているという惨状を目の当たりにする。

 同僚のユーリィが倒れているのを見つけたアレクセイは駆け寄り「大丈夫か?」と声をかけるが、ユーリィの顔は真っ黒に焼け焦げていた。あまりの驚きに一瞬声を失ったが「立ち上がるんだ。頑張れ」と再度声をかけ、抱えて歩き出す。

 凄まじい黒煙と青白い炎が立ちのぼる中、アレクセイはユーリィを建物に移動させると、そこには同じく被ばくした同僚のセルゲイがいた。「俺なら平気だ。お前たちは先に行け」と咳き込みながら言うセルゲイを横目に、アレクセイは階段を下りると救急隊を呼び、ユーリィを任せる。そして再びアレクセイは建物に戻り倒れているセルゲイを抱え外に出るが…。

■放射能による火傷の症状を研究! リアリティーを追求した小道具、衣装、特殊メイクは圧巻

 本作の衣装を担当したのは、『ウォンテッド』『リンカーン 秘密の書』などのハリウッド映画にも携わってきたヴァルヴァーラ・アヴジューシコ。画面に映るすべての衣装は本物でなくてはならないと主張したアヴジューシコは、防護服やマスク、ベッドリネンまで、あらゆるものをフリーマーケットやビンテージショップで調達した。エキストラも1980年代のオリジナルの衣装を着用し、500人ものエキストラが参加した。

 そして本作では、放射線障害の段階を正確に表現することが重要だったため、特殊メイクにもこだわった。監督のコズロフスキーは「特殊メイクのスペシャリストであるアレクセイ・イヴチェンコとキーメイクアップアーティストのエカテリーナ・シャフヴォロストヴァは、放射線による火傷のさまざまな症状を研究するために、膨大な量のドローイングとスケッチを作成しました。その数は約100枚。撮影現場には、放射線を浴びた初日から死に至るまでの組織の損傷が、段階的に示された写真のフォルダーが置かれていました。それぞれの段階と登場人物に番号が振られ、それを脚本に盛り込んだのです」と語っている。】


 ciatr[シアター]
【ネタバレ】『チェルノブイリ』全話あらすじ&ドラマのスゴさを解説 史上最悪の原発事故が起きた背景とは
【HBO制作『チェルノブイリ』全5話のあらすじをネタバレありで紹介 史上最悪の原発事故はなぜ起きたのか

第1話「1時23分45秒」のあらすじ【ネタバレ】

1988年4月26日、政府の監視下にいた一人の男がある告発をテープに録音し、隠してから首吊り自殺を図ります。彼の名はヴァレリー・レガソフ(ジャレッド・ハリス)。チェルノブイリ原発事故の収拾を担当した科学者でした。

その2年と1分前、1986年4月26日午前1時23分45秒、チェルノブイリ原子力発電所で爆発事故が起こりました。あり得ない事故に所員たちが慌てふためく中、火災が発生して消防士たちが消化活動を始めます。

一方、原発の関係者たちが住む町プリピャチでは、夜中の火災を見に人々が橋に集まっていました。この時点で誰一人、事の重大さを知る者はいません。

爆発前に安全性テストの実験を行なっていた責任者のディアトロフ副技師長(ポール・リッター)は、駆けつけたブリュハノフ所長(コン・オニール)とフォーミン技師長(エイドリアン・ローリンズ)に、爆発したのは非常用タンクであると事実確認もせず報告。その間にも何も知らない所員や消防士たちが次々と被曝していきます。

その頃、クルチャトフ原子力研究所の副所長ヴァレリー・レガソフは、閣僚会議副議長でエネルギー部門責任者ボリス・シチェルビナ(ステラン・スカルスガルド)から事故処理の政府委員会へ出席するよう要請されていました。

第2話「現場検証」のあらすじ【ネタバレ】
白ロシア原子力研究所のウラナ・ホミュック博士(エミリー・ワトソン)は、いち早く事故の深刻さを知り、チェルノブイリへ向かいます。その間にも、プリピャチ病院には放射性火傷を負った消防士たちが次々運ばれ、火事見物して被曝した住民たちでもあふれて野戦病院のような有様に。

政府委員会では、いまだ事故を楽観視している閣僚たちを尻目に、レガソフが炉心が剥き出しになって放射性物質が放出されているという事の重大さを詳細に伝えていました。それを聞いたゴルバチョフ書記長は、シチェルビナとレガソフに現地調査を命じます。

現地にヘリで向かった二人の目に映ったのは、黒煙上る原子炉と建屋の上に散乱する黒鉛片。高精度な測定器で測った放射線量は15,000レントゲンを記録し、明らかに原子炉が爆発したことを示していました。

レガソフは炉心溶解物を封じ込めるためには5,000トンのホウ素が必要とシチェルビナに訴え、すぐに準備を整えてヘリからの投下作業を開始。一方ソビエト政府は諸外国からの追及でようやく原発事故を認め、プリピャチなど近隣住民の避難が始まりました。

しかしホウ素投下が成功したのも束の間、チェルノブイリに来たホミュックがシチェルビナとレガソフにさらなる水蒸気爆発の危険性を説きます。これを回避するには炉心下の地下タンクから排水作業を行わなければならず、それは作業員の被曝を意味しました。

第3話「KGB」のあらすじ【ネタバレ】
地下タンクの排水に成功した3人は無事戻り、火災は鎮火に向かっていましたが、すでにメルトダウンが始まっていました。

炉心融解物が地下水に入るとドニエプル川から黒海までが汚染されるため、溶解物を液体窒素で冷却する案が出され、炭鉱夫を動員して穴を掘り、原子炉の下に熱交換器を設置することになります。

ホミュックは事故原因の追及に余念がなく、自ら事故当時に実験を行った技師たちに話を聞きに行きます。彼らはすでに重度の被爆により死に瀕していました。しかしホミュックはそこで、緊急停止のAZ-5ボタンを押した時に爆発したという重要な証言を耳にします。

その頃、ホミュックと同じ病院にイグナテンコ消防士の妻リュドミラ(ジェシー・バックリー)が夫を探しに来ていました。被爆末期の症状で痛々しい姿の夫に直接触り、子を宿したことを報告するリュドミラ。ホミュックはその姿を目撃し、慌てて彼女を部屋から引きずり出します。

妊婦を被曝の危険に晒したと騒ぎ立てるホミュックは、その場でKGBに逮捕されて拘束されます。レガソフはKGBのチェルコーフ第一副議長に彼女の釈放を要求。ホミュックは釈放され、二人は改めて科学者として事故の真相を解明することを決意します。

第4話「掃討作戦」のあらすじ【ネタバレ】
事故から数ヶ月が経ち、プリピャチ周辺では「リクビダートル」と呼ばれる除染作業を行う作業員たちがテント生活をしていました。その中には避難時に置き去りにされ、汚染されたペットたちを駆除する仕事も……。

大学図書館で「極限状況下のRMBK炉について」という論文を閲覧し、再び病院でディアトロフに聴取を行ったホミュックは、事故の直接的原因がAZ-5ボタンを押したことだと突き止めます。

レガソフたちは月面車を使って建屋屋上に散乱する黒鉛を原子炉に落とす作業に取りかかりますが、汚染度が高い場所は月面車も使用できません。西ドイツから提供された無人作業車「ジョーカー」も数秒後に機能停止。実は政府は体面から本当の線量を西ドイツに伝えていなかったのです。

レガソフは苦悩の末、人間の作業員を投入することを決めます。作業に当たるのは一人一回につき90秒。総勢3828名もの兵士たちが動員されました。

調査を終えて戻ったホミュックは、レガソフとシチェルビナに爆発の原因の根拠となる論文を見つけたことを報告し、レガソフにIAEA本部で告発するべきだと迫ります。

しかし事故の真相を暴露することは、ソ連製のRBMK原子炉の欠陥を指摘することであり、自分はおろか家族までKGBに狙われることになるのです。一方、リュドミラの赤ちゃんは出産後4時間で死亡していました。

第4話「掃討作戦」のあらすじ【ネタバレ】
事故から数ヶ月が経ち、プリピャチ周辺では「リクビダートル」と呼ばれる除染作業を行う作業員たちがテント生活をしていました。その中には避難時に置き去りにされ、汚染されたペットたちを駆除する仕事も……。

大学図書館で「極限状況下のRMBK炉について」という論文を閲覧し、再び病院でディアトロフに聴取を行ったホミュックは、事故の直接的原因がAZ-5ボタンを押したことだと突き止めます。

レガソフたちは月面車を使って建屋屋上に散乱する黒鉛を原子炉に落とす作業に取りかかりますが、汚染度が高い場所は月面車も使用できません。西ドイツから提供された無人作業車「ジョーカー」も数秒後に機能停止。実は政府は体面から本当の線量を西ドイツに伝えていなかったのです。

レガソフは苦悩の末、人間の作業員を投入することを決めます。作業に当たるのは一人一回につき90秒。総勢3828名もの兵士たちが動員されました。

調査を終えて戻ったホミュックは、レガソフとシチェルビナに爆発の原因の根拠となる論文を見つけたことを報告し、レガソフにIAEA本部で告発するべきだと迫ります。

しかし事故の真相を暴露することは、ソ連製のRBMK原子炉の欠陥を指摘することであり、自分はおろか家族までKGBに狙われることになるのです。一方、リュドミラの赤ちゃんは出産後4時間で死亡していました。

第5話「真実」のあらすじ【ネタバレ】
KGBとの取引
チェルコーフに原子炉の欠陥を修理する約束を取り付けたレガソフは、IAEA本部で原因は技師のミスであると、その奥にある真相を隠したまま報告。その見返りとしてクルチャトフ原子力研究所所長の座を確約されます。しかしレガソフもすでに髪が抜けるなど、放射線障害の症状が現れていました。

それでもホミュックは、事故の責任を問う裁判で真相を傍聴する科学者たちに告げ、修理を求める声を上げさせようと食い下がります。裁判は1987年7月に開廷され、被告としてブリュハーノフ、ディアトロフ、フォーミンの三人と証人としてシチェルビナ、ホミュック、レガソフの三人が出廷しました。

裁判での証言
シチェルビナはまず、事故の背景にあった被告三人の思惑と実験の実状について説明。そもそも4号炉の完成後にするべきテストが未完のまま炉が稼働されており、功を焦る所長たちは失敗続きの実験を何としても成功させようとしていました。

次にホミュックが、事故の原因には「人的な問題」と「科学的な問題」があったと指摘します。月末のノルマ達成のため、キエフ電力局から出力を落とさなければならない実験を10時間延期するよう要請を受けていました。ところが昇進がかかっていたディアトロフは、無理な状況で実験を強行したのです。

その結果、実験が予定されていた4月25日ではなく26日に行われ、何も知らされていない経験の浅い技師が実験を担当することに。明らかに安全規則を無視して実験を強行しようとするディアトロフに誰一人逆らえず、原子炉は極限の状態に陥っていきます。

不都合な真実
最後にレガソフが「科学的な問題」を説明します。バランスの崩れた極限状態にある原子炉に、制御棒が挿入されたことで急激に反応し爆発。緊急停止ボタンAZ-5が皮肉なことに起爆ボタンとなったのです。ここまで説明したレガソフをディアトロフが遮り、一旦閉廷されそうになりますが、ついにレガソフは事故の真相である原子炉の欠陥の政府による隠蔽を暴露します。

閉廷後、レガソフはKGBに連行され、チェルコーフに社会的抹殺を告げられます。政府の監視下に置かれたレガソフはその2年後、告発テープを残して自ら命を絶ちました。しかしレガソフの告発によって多くの科学者が立ち上がり、稼働中のRMBK原子炉の改良が施されたのでした。

チェルノブイリとフクシマ、その共通点は
「嘘の代償」はあまりにも大きく、世界を巻き込んだ史上最悪の原発事故を引き起こしました。レガソフはこの事故の最大の原因は政府による「嘘」だとはっきり語っています。ホミュックという架空の登場人物は、その嘘に対する科学者たちの良心の象徴として創作されたのでしょう。

事故当時の書記長ゴルバチョフは後に、ソビエト連邦崩壊の真の原因はチェルノブイリ原発事故だったかもしれないと告白しています。日本でも、東日本大震災による福島第1原発事故によって社会基盤が大きく揺さぶられました。

チェルノブイリとフクシマ、そのどちらにも「原発の安全神話」がどっしりと腰を据え、原子力に対する無知とデマが横行し、その結果多くの人が犠牲になりました。このドラマから私たちが学べることは、多いのではないでしょうか。】

  

 1986年4月26日未明、チェルノブイリ原子力発電所で爆発が起こる。未曾有の原発事故の発生に冷戦下の旧ソビエト政府が事態の深刻さを隠ぺいしようとする中、被害の拡大を抑えようと必死に戦った英雄たちがいた。あの時現場で何が起きていたのか?!ソビエト政府に調査を委任された科学者、現場の対応を任されたシチェルビナ副議長、事故の謎解明に奔走した核物理学者

 1. #1 『1時23分45秒』
第1話『1時23分45秒』…1986年4月26日未明、旧ソビエト連邦のチェルノブイリ原子力発電所で爆発が起こる。現場監督の副技師長ディアトロフは、部下に原子炉の炉心へ行き確認するよう指示する。一方、出動命令を受けた消防士ヴァシリーが現場に向かう中、近隣住民は、遠くで起きている火事を見物していた。そんな中、発電所幹部が核シェルターに集まり、事故は適切に対応され、甚大な被害はないという見解で一致し…。

 2. #2 『現場検証』
第2話『現場検証』…翌朝、核物理学者のホミョクが勤める研究所で高濃度の放射性物質が検知され、近くの病院は搬送された作業員や消防士、その家族でごった返していた。クレムリンではゴルバチョフ書記長ら政府幹部が集まり、事故は適切に対応されているとの認識を交換するが、居たたまれなくなったレガソフは原子炉が損壊している恐れがあり、高い放射能が漏れているはずだと発言。書記長はレガソフと副議長に現場検証を命じる。

 3. #3 『KGB』
第3話『KGB』…事故から4日後、被曝した消防士の妻リュドミラは夫が転送された病院に駆けつけ、絶対に彼に触れないという条件で面会を許される。現場では火災は消し止められるもメルトダウン(炉心溶融)が始まっており、汚染された水が大陸中に流出する恐れがあると気付いたレガノフは、避難区域を拡大するようゴルバチョフ書記長に訴える。ホミョクは事故当時の状況を作業員に直接聞くため彼らが搬送された病院に向かう。

 4. #4 『掃討作戦』
第4話『掃討作戦』…当局は軍を増員して危険区域に残る家畜や残された犬などの動物の処分や、汚染された樹木や地表の処理にあたる。レガソフらは、高度の放射能汚染のため5ヵ月が経ってもまだ手を付けられていない原子炉の屋根の上の作業にロボットの使用を試みる。現場の惨状をよそに当局は、事故による被害の大きさは世界規模ではないとの見解を固持する。ホミョクは現場監督だったディアトロフに事故当時の状況を聞くが…。

 5. #5 『真実』
第5話『真実』…1987年7月、シチェルビナ、ホミョク、レガソフは、法廷で事故の当日発電所で起きた一部始終を調査した結果を法廷で証言する。レガソフの証言中、シチェルビナは激しく咳き込み、自身の体調の急激な悪化を実感する。今回の証言が前回の証言内容と異なることを指摘されたレガソフは、前回は当局やKGBを恐れて嘘の証言をしたが、隠ぺいの代償の大きさを分かって欲しいと真実を訴え、身柄を拘束されてしまう。