幻の〝原発ルネッサンス〟に踊らされた 日本の「原子力御三家」の悲惨な末路。

原発という、人を不幸にする虚業に手を染めず地道にやっていれば・・
※ 今こそ東芝は原発事業から撤退して「技術の東芝」へと再生するべきだ

疫病神・WH(ウェスティングハウス)を背負い込んだ東芝は、倒産の危機。
※ 断末魔の東芝:損失最大7千億円の可能性 政策投資銀に支援要請

死に体・アレバに寄生された三菱にはまだ余力が、しかし欠陥・蒸気発生器でも巨額損失

エジソンの末裔・GEを引き受けた日立は英原発事業で、これから深みに・・

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 ニュース屋台村より
原発ババ抜き しゃぶられた東芝―米国原子力産業の損失を尻拭い
【日本を代表する名門企業・東芝が崩壊の危機に立っている。米国の孫会社に隠されていた地雷が爆発し東芝が吹っ飛ぶ、という事件が起きた。銀行団から支援を得られるか、瀬戸際の救済策がメディアをにぎわしている。

発端は、東芝が子会社にした原発メーカー・ウェスティングハウス(WH)が2015年末に買収したCB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)という会社だ。報道によると7千億円もの損失が発覚したという。

気が遠くなるような数字だ。東芝は昨年4月、子会社のWHに潜んでいた損失2500億円を処理したばかりだ。1年も経たずに、その子会社で7千億円の損失が露見した。

◆不可解なやり口
モノづくり企業である東芝が汗して蓄えた資産を買収で手にした米国の子会社・孫会社が食い尽くすという構図である。

不可解なのは、WHがS&Wを買収した時期だ。2015年12月。東芝の粉飾決算が大問題になっていた、ちょうどその時である。

西田厚聡社長時代に買収したWHが抱える巨額の損失を監査法人ぐるみの隠ぺいをしている、と東芝は疑惑の目を向けられていた。

その最中にWHは「危ない買収」を決断した。買い取ったS&Wは、WHと同業の原発サービス会社である。業界事情に詳しいWHが、S&Wがどんな状態か分かっていたはずだ。1年足らずで7千億円の損失が発覚する買収を、親会社が大揺れしている時に実行する。不可解なやり口である。

原発会社が経営難になっているのは米国だけではない。欧州を代表するフランスのアレバ社は、原発建設のコスト膨張で経営が行き詰まり、政府の管理下に入った。原発事業は採算に合わない、というのは国際的常識になっていた。

S&W買収の報告は東芝の原子力部門に上がっているだろう。親会社として「GO」の決済をした段階で責任は東芝にある。

東芝はどれほどの審査が出来たのか。米国の原子力事業はWHが仕切っている。言葉は悪いが「めくら判」だったのではないか。WHが「S&Wを買い取ることが今後の原子力ビジネスを推進するうえで重要だ」と言えば「よろしく頼む」というのが、東芝内の日米関係ではなかったか。

◆もともとヘンだった「売却話」
そもそもウェスティングハウスを買収したことが「惨劇の始まり」だった。

日本の原子力産業は米国によって育てられた。三菱重工、日立製作所、東芝の3社は、米国の2大メーカー、ゼネラル・エレクトリック(GE)とWHから技術を供与され国内で原発を建設した。米国が親で、日本は子ども。ところが、スリーマイル島の原発事故が状況を変えた。炉心のメルトダウンに肝を冷やした米国で原発の新設は止まり、原発メーカーの経営は悪化。資金繰りに窮したWHは、原発事業部を切り離して別会社にして売却した。買えるのは日本メーカーしかない。資産2千億円程度と見られていたWHの原発事業を6千億円の大枚をはたいて06年に買ったのが東芝だった。

法外な買収額を「WHは原発35基を受注できる力がある。年間1兆円の売り上げが期待できるから」と、東芝は説明した。ところが計画は絵に描いたモチで、福島第一原発事故が追い打ちをかける。

もともと「売却話」はヘンだった。原子力は米国の戦略産業だ。同盟国だからとはいえ虎の子のWHを日本企業に売る、というのは不可解である。

結論から言えば、WHは6千億円のキャッシュを得て経営難を乗り切り、東芝は株式77%を握りながら「実行支配」が出来ない「おとなしい株主」に甘んじた。

WHは原子力部門を切り離して別会社にしたことで、この会社に財務は「非公開」となっていた。WH本体は上場企業なので財務は公開される。別会社は非上場企業だから、外に財務は公開しない。

買収交渉で東芝には「内部資料」が示されたが、どこまで本当のことが書かれていたのだろう。米国側が書いた筋書きを、外部のアナリストや会計士など第三者の目で審査することはできない仕組みになっている。

背後には日米政府がいる。原子力を巡る米国の要請が、東芝によるWH買収を後押しした。

子会社なのに「親会社」というWHのグループ内で「隠れ損失」が連続爆発した。

◆実効支配できない「悲しき親会社」
東芝が粉飾疑惑で思考停止しているのをいいことに、平時では決済を得られないような「危ない買収」を実行に移す。米国の原子力業界が抱える巨額損失を、日本の東芝に移し替える「ウルトラC」だったのではないか。

謀略めいた分析に思われるかもしれないが、企業の合併・買収(M&A)を手がける米国の投資銀行にありがちなやり方だ。日本では理解不能だが、米国では原発企業の売買が大儲けの商売になっている。損を抱えた企業が会社を売り払ってたんまり儲けて逃げ切る。共犯である投資銀行やファンドは手数料をガッチリ稼ぐ。

東芝はまんまと「嵌(は)められ」、米国で生じた損害を東芝が被ることになった。

原子力部門を東芝に売ってWHは大儲けした。東芝は懸命に「適正な取引だった」と世間に説明する。「お人好し企業」と思われたのだろうか、今度は、莫大(ばくだい)な損を抱える同業者を買って、ツケを東芝に回したのである。

原発の運営会社であるS&Wは、もともとシカゴ・ブリッジ&アイアン・カンパニー(CB&I)という会社が持っていた。この会社がWHに転売した。たっぷり毒が仕込まれていた。内部の手続きでは、東芝の責任で買ったことになっているのだろう。

「首をかき切ってでも儲ける」という米国金融資本のルールでは、法律が禁止する行為でなければ「罠(わな)に嵌まった奴の自己責任」である。「それはしないよね」という日本流の暗黙の信義など存在しない。

東芝は米国の原子力事業で責任を負う立場になっていたが、責任を果たせる力関係になかった。株だけ買わされ、実効支配できない「悲しき親会社」は大きなカモに見られていたのかもしれない。

日本とアメリカの関係が、このディールに滲(にじ)み出ているように思える事件である。】