一発逆転を狙った運命のWH買収
米欧・原子力ムラが捨てたババを引かされた東芝は・・

 味の素はロシア危機に乗じ?1億6616万ルーブル(約6億3142万円)の〝捨て値〟で、
ジェネチカ研究所(味の素・ジェネチカ・リサーチ・インスティチュート社)という宝をゲット。

 一方の東芝は、原子力ルネッサンスという夢幻しに踊らされ、
米欧・原子力ムラが見放したWH(ウエスチングハウス)という疫病神を、54億ドル(約6400百億円)の大枚をはたき背負い込むことに・・

東芝の大逆転を呼んだ「原子力産業の経済学」
【ウエスチングハウス買収合戦を制した東芝と、敗れた三菱重工との分かれ目――それは「希少性」の評価基準がまったく違うことだった。 世界の大型M&A(企業の合併・買収)では、近年まれにみる「大逆転」といっていい。東芝は英核燃料会社BNFLが保有する米原子炉メーカー、ウエスチングハウス(WH)を五十四億ドル(約六千四百億円)で買収した。今後、米政府の承認などが残るが、東芝がWHを傘下に収めて世界トップクラスの原子炉メーカーになるのはほぼ間違いない。

WH買収劇の結果を分けたのは、まさに希少性をめぐる価値判断の差、言い換えれば「原子力産業の経済学」だった。 WHのブランドと米企業としての政治的影響力は大きな魅力であり、それが他社の手に渡るリスクを考えれば、三菱重工はもちろんWHを買収したかった。だが、WHの希少性に関しての判断は「資産評価に基づく買収価格」を優先した。同じ加圧水型軽水炉(PWR)メーカーとしてWHと長年、連携してきた三菱重工にとって、WHは「もはや学ぶべきことも依存する技術もない企業」にすぎず、資産価値以上のものを見出しにくかったからだ。】

WH買収を競った三菱重工は、「もはや学ぶべきことも依存する技術もない企業」と、資産価値以上の価格を付けず、

WHの買収で一発大逆転を狙った東芝は、3500億円の暖簾代という火種(不良債権)を抱え込むことに・・・

そして、3.11福島原発事故がその火種に着火、疫病神と化した原発事業の中核・WH社の巨額損失を糊塗するために、利益付け替え・不適切決算(粉飾)を繰り返し、唯一稼げる虎の子・東芝メディカルまで売却、

原子力と半導体という不採算部門?しか残っていない名門・東芝が、歴史から姿を消す日は近い。

 ひとり東芝だけでなく、原子力という泥舟に乗る 日立・三菱、原発を持つ旧電力・九社、仏アレバ社も、

賢明な経営者であれば、原子力という泥舟と運命を共にしないため、一刻も早く降りる算段をするだろうが・・

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 日経ビジネスより
東芝と味の素、命運を分けた買収劇
【「高値掴み」が転落の元凶

 2006年、東芝は三菱重工やGE‐日立連合と激しく競りあった末にウエスチングハウスを手に入れた。それは、東芝が原子力事業を経営の大きな柱として「選択と集中」を進めていくという宣言でもあり、メディアも華々しくとりあげた。だが結果的には、ウエスチングハウス買収こそが東芝転落の元凶となってしまった。

 ウエスチングハウスは2012、2013年度の2年間にわたり計約1000億円の減損を出し、それを隠そうとしたことが不正会計の始まりだ。業績悪化とウエスチングハウスの1000億円の減損で、東芝は債務超過の危機に陥ったが、子会社の医療機器メーカー売却でしのいだ。そのウエスチングハウスが今年度、数千億円規模の損失をだすという。だが東芝には売却によって埋め合わせできる資産はもう残っていない。

最後は「社長一任」で押し切ったか

 ウエスチングハウスは原発メーカーとして世界でも屈指の名門企業であり、2006年当時、原子力発電事業は右肩上がリだと多くのビジネスマンが考えていたことを斟酌すれば、ウエスチングハウスの買収自体を経営判断ミスだったと断じることはできないが、買収金額が高すぎた。東芝が買収に要した金額は50億ドル、6200億円である。これは当初予想された金額の2倍を超えていた。東芝経営陣の間でもそれが問題になったが、当時の西田厚聰社長は取締役会で「社長一任」をとりつけて押し切ったようだ。

味の素によるロシアの研究所の買収は数少ない成功例

 日本では数少ない成功例のひとつは味の素による、ロシアのジェネチカ研究所の買収だ。正確に言えばヨーロッパ・ナンバーワンのアミノ酸研究所として知られた、ロシアの国立研究機関と合弁会社を1998年に設立、その後、2003年にその合弁会社を完全子会社化したという経緯だが、その実態としては1998年のロシア経済危機で破たんに追い込まれたジェネチカ研究所を買収したようなものだ。

「ジェネチカ研究所(味の素・ジェネチカ・リサーチ・インスティチュート社)は、今われわれにとって、とても大事な宝物なのですよ」

 味の素の伊藤雅俊会長がそう語るように、アミノ酸研究を中核に据えて事業構造の多角化を図る同社にとって、ジェネチカ研究所はまさに“宝物”になっている。1998年のロシア危機の最中に買いにいったからこそ手に入れることができたのだ。ちなみにジェネチカ研究所の資本金は2005年時点で、1億6616万ルーブル(約6億3142万円 1ルーブル3.8円換算)にすぎなかった。アミノ酸研究でヨーロッパ随一を誇る、90人を超えるロシアの頭脳集団を手中に収めた鮮やかさは日本企業には珍しい。】一部抜粋