報道ステーション、3月の特集一覧
2016年3月21日放送
高校生の“校外”政治活動「届け出義務化」の波紋
【選挙権年齢の18歳以上への引き下げを前に、愛媛県内の県立高校59校すべてで、「放課後や休日に校外で政治活動を行う」場合、学校への事前の届け出を義務化する。校則を変えて、春から実施していく。あくまで生徒の安全のためだとしているが、専門家は憲法に触れかねないと警鐘を鳴らす。
名古屋大学の中嶋哲彦教授は「どういった集会に参加するか、どういった署名活動をするかというのは、その人の思想や良心の根幹に関わることだから届け出るということ自体は、それ自体が思想良心の自由を制約する行為だ」と指摘する。
県内の高校生はどのように思っているのか。17歳の女子高校生は「全部監視されているみたいで集会に行きにくくなる。活動の自由が狭まったりしたら18歳に引き下げた意味がなくなるのではないか」と話す。
また、16歳の男子高校生は「未成年なので申請して政治活動に参加した方がいいと思う」という。
愛媛県の教育委員会が県立高校に配布した校則の改定の見本には『1週間前に保護者の許可を得てホームルーム担任に届け出る』とある。“届け出を要する事項”の中に地域行事やキャンプなどと並んで『選挙運動や政治的活動への参加』が新たに加わっている。愛媛県の教育委員会は、届け出制はあくまでも“各学校の判断”とするが、去年12月1日に見本の資料を配布したうえで、見直す場合は12月末までに報告するよう求めた。すると、愛媛の59校全校が校則を変えた。
愛媛県教育委員会事務局高校教育課の長井俊朗課長は「あくまで各学校の学校長の判断に委ねた。届け出制による大きな弊害はない。決して思想を把握して、どうのこうのということはない」と話す。
松山市内で安保法制の廃案を訴える若者たちの中に4月から高校生になる15歳の女の子も参加していた。届け出制について「とりあえず届け出をして行動すると思うけど、でも、そのうち廊下で『これどう思う』と質問するだけで『それは政治活動じゃない?』という風潮が広まっていく気がする」と不安を口にする。そのうえで「政治は自分たちの生活に直結するもの。例えば、自分の家の近くに落ちているゴミをなくすにはどうしたらいいかと話をすることは自然なこと。それと同じように、自分たちの生活を良くしていくにはどうしたらいいのか、政治をどうしたらいいのかと考えるのは当たり前のこと。それを政治活動といって特別視する必要ないと思う」という
そもそも愛媛県の各学校が届け出制を導入したのは、文部科学省の通知がきっかけだった。
文科省は18歳選挙権になるのを受け、去年10月、校外での政治活動を46年ぶりに解禁。ただし“暴力的な政治活動になる恐れ”があるものなどは“制限又は禁止することが必要”とした。さらに、その3カ月後には『届け出制も可能である』と全都道府県に文書を配布した。
ただ、都道府県によって対応は分かれた。
大阪府は、届け出制は必要ないと判断した。大阪府教育委員会高等学校課の橋本光能課長は「高校生なので我々も教育委員会として、最低限の制限や制約が必要だと思うが、最低限という範疇に“届け出制は含まれない”と判断した。事実上の“許可制”にも繋がってしまうのではという懸念を持った」と話す。
ただ、生徒の安全確保のためには学校も把握するべきとの声もある。中嶋教授は「どんな危険が生じるおそれがあるのか、どう想定しているのかということを明らかにしないといけない。どうしても規制が必要であるというのなら、限定的に規制をかけるべき」と指摘する
松山市で4月から高校生になる15歳の女の子は「届け出制で、政治と高校生の間に一つ大きな隔たりをつけてしまう。そうすると政治に関心を持とうという人も少なくなってしまうし、関心を持たないとわからないから選挙にも行かない。投票率も下がる。それだと『18歳選挙権って何の意味があったの』となってしまう」と話す。】
2016年3月21日放送
高校生の“校外”政治活動「届け出義務化」の波紋
【選挙権年齢の18歳以上への引き下げを前に、愛媛県内の県立高校59校すべてで、「放課後や休日に校外で政治活動を行う」場合、学校への事前の届け出を義務化する。校則を変えて、春から実施していく。あくまで生徒の安全のためだとしているが、専門家は憲法に触れかねないと警鐘を鳴らす。
名古屋大学の中嶋哲彦教授は「どういった集会に参加するか、どういった署名活動をするかというのは、その人の思想や良心の根幹に関わることだから届け出るということ自体は、それ自体が思想良心の自由を制約する行為だ」と指摘する。
県内の高校生はどのように思っているのか。17歳の女子高校生は「全部監視されているみたいで集会に行きにくくなる。活動の自由が狭まったりしたら18歳に引き下げた意味がなくなるのではないか」と話す。
また、16歳の男子高校生は「未成年なので申請して政治活動に参加した方がいいと思う」という。
愛媛県の教育委員会が県立高校に配布した校則の改定の見本には『1週間前に保護者の許可を得てホームルーム担任に届け出る』とある。“届け出を要する事項”の中に地域行事やキャンプなどと並んで『選挙運動や政治的活動への参加』が新たに加わっている。愛媛県の教育委員会は、届け出制はあくまでも“各学校の判断”とするが、去年12月1日に見本の資料を配布したうえで、見直す場合は12月末までに報告するよう求めた。すると、愛媛の59校全校が校則を変えた。
愛媛県教育委員会事務局高校教育課の長井俊朗課長は「あくまで各学校の学校長の判断に委ねた。届け出制による大きな弊害はない。決して思想を把握して、どうのこうのということはない」と話す。
松山市内で安保法制の廃案を訴える若者たちの中に4月から高校生になる15歳の女の子も参加していた。届け出制について「とりあえず届け出をして行動すると思うけど、でも、そのうち廊下で『これどう思う』と質問するだけで『それは政治活動じゃない?』という風潮が広まっていく気がする」と不安を口にする。そのうえで「政治は自分たちの生活に直結するもの。例えば、自分の家の近くに落ちているゴミをなくすにはどうしたらいいかと話をすることは自然なこと。それと同じように、自分たちの生活を良くしていくにはどうしたらいいのか、政治をどうしたらいいのかと考えるのは当たり前のこと。それを政治活動といって特別視する必要ないと思う」という
そもそも愛媛県の各学校が届け出制を導入したのは、文部科学省の通知がきっかけだった。
文科省は18歳選挙権になるのを受け、去年10月、校外での政治活動を46年ぶりに解禁。ただし“暴力的な政治活動になる恐れ”があるものなどは“制限又は禁止することが必要”とした。さらに、その3カ月後には『届け出制も可能である』と全都道府県に文書を配布した。
ただ、都道府県によって対応は分かれた。
大阪府は、届け出制は必要ないと判断した。大阪府教育委員会高等学校課の橋本光能課長は「高校生なので我々も教育委員会として、最低限の制限や制約が必要だと思うが、最低限という範疇に“届け出制は含まれない”と判断した。事実上の“許可制”にも繋がってしまうのではという懸念を持った」と話す。
ただ、生徒の安全確保のためには学校も把握するべきとの声もある。中嶋教授は「どんな危険が生じるおそれがあるのか、どう想定しているのかということを明らかにしないといけない。どうしても規制が必要であるというのなら、限定的に規制をかけるべき」と指摘する
松山市で4月から高校生になる15歳の女の子は「届け出制で、政治と高校生の間に一つ大きな隔たりをつけてしまう。そうすると政治に関心を持とうという人も少なくなってしまうし、関心を持たないとわからないから選挙にも行かない。投票率も下がる。それだと『18歳選挙権って何の意味があったの』となってしまう」と話す。】