「原発のことや企業、国の体制、防衛産業・・」タブーに果敢に挑戦した、
原作者・東野圭吾さん、松竹と堤幸彦監督、そして 江口洋介さん、本木雅弘ら出演者の
勇気に最敬礼。

関連記事 『東京原発』東京には原発が必要だ!役所広司演ずるカリスマ都知事が爆弾発言

 映画『天空の蜂』予告編


 映画・COMより
江口洋介、原発を映画で描く難しさ吐露! 堤監督の勇気に最敬礼
1

 西日本新聞より
問題を理解し、逃げない覚悟 原発テロ描く映画「天空の蜂」主演 江口洋介さん
原発の上空に全長34メートルの巨大ヘリをホバリングさせ、日本の全原発破棄を要求し、それが入れられないならヘリを墜落させる-原発テロとその攻防に関わる人々を描く映画「天空の蜂」(堤幸彦監督)。設計したヘリを奪われ、事件に巻きこまれる主人公、湯原を演じる江口洋介さんをGet!

 -作品の紹介を。重いテーマですが、エンタメ性もありますね。

 ★江口 (湯原が設計した)“科学技術が生んだ化け物”と言ってもいいような巨大ヘリが(テロ犯人の)遠隔操作で暴走します。社会性とともにエンターテインメントの枠組みで(観客が)大事件に遭遇するかのような、体感型の映画になっていると思います。東野圭吾さんが1995年に書かれた原作はいろんな角度から社会の問題を伝えていて、最初はどの部分を掘り下げるのかと思いました。台本を読むとアクション映画というとらえ方をしてもいいと思いました。湯原は仕事にまい進し(息子ら)家庭をないがしろにした父親。彼がテロ事件(発生から墜落予告時間まで)の8時間の中で、とんでもない行動にラスト出て、親子の絆を取り戻すんです。


 -“とんでもない行動”とは、アクション絡みですか。

 ★江口 (墜落予告の)15分前に自衛隊ヘリに乗り込み、怪物(巨大ヘリ)の墜落阻止に飛んで行く場面。地上400メートルでドアの開いたヘリで(身を乗り出して)撮影しました。スリルなんてもんじゃない(笑)。風とヘリの音、ロングで押さえてるカメラが何個もあって、並走するヘリもあって、湯原の緊張感と僕自身の緊張ももうマックス! 監督から求められましたし、CGでなく実際にやる価値はあると思いました。
 -作品は日本社会の暗部や問題点を問いかけます。(大事故が起きれば広範囲で人が住めなくなる)原発の存在、核のごみ、原発作業員の被ばく、それこそ原発テロ…。〈たとえ目の前で理不尽なことが行われていても見たくないものは見ようとしない〉とか〈沈黙する群衆〉という言葉で。

 ★江口 95年に書かれた原作の内容が今とシンクロしているっていう部分がある。予言の書みたいだと思うんです。で、湯原を演じる上で考えたのは、いろんな出来事がありますけど、自分が直面する問題を理解する、そこから逃げないという覚悟、そして親として、僕も息子がいますけど、自分の子どもに何を見せるのか、(責任ある)意識をもって臨む、ということでした。これから世の中どうなるのか、未来をイメージしながら生きていく、閉塞(へいそく)感の中では生きていけない、そういった思いを湯原の中に詰め込み、撮影に臨みました。映画は娯楽ですけど、(社会的な問いかけを)ほんの1ミリでも感じ、数パーセントでも吸い取ってもらえれば。全スタッフが全身全霊を傾けて、この「映像化不可能」と言われた作品に臨みましたから、映画会社(松竹)も含めて。

 -(問題としての)原発を映画にすること自体、スポンサーとの関係などで難しいと聞くことがあります。


★江口 監督も映画会社も時間をかけて脚本を練り、ニュートラルな立場を追求していて、その中で僕たちもトライできたと思います。
 -原発設計者(本木雅弘)の息子が(地球環境保護の壁新聞作りをしたクラスで)いじめに遭い自殺する場面で〈沈黙する群衆〉という言葉が出てきます。こちらも見て見ぬふりへの問いかけですよね。

 ★江口 ほんといろんな角度の問題が絡み合っている映画。3回は見てもらいたい(笑)。1回目はアクション映画として、2回目は社会派、3回目が父と子のお話。見れば見るほど奥深いものを感じてもらえると思います。

 -今後どんな役を演じたいですか。

 ★江口 俳優をやって30年目ぐらい。まだやりきれてないと思っています。今、アニメの実写化作品が増えて、アニメやCGも含め日本の映画は世界レベルです。ですけど、人間とか人生だとか、アニメでは表現できない人間の奥行き、というようなものを表現する映画に出演してみたいな、というのがありますね。

 ▼えぐち・ようすけ 1968年東京都生まれ。87年「湘南爆走族」で映画デビュー。テレビドラマでは「ひとつ屋根の下」シリーズで人気を集め、「救命病棟24時」「白い巨塔」に出演。映画は近作では「るろうに剣心」シリーズ、「脳男」など。経済ドキュメンタリー「ガイアの夜明け」では案内人を務める。「天空の蜂」は公開中。