この種の事故や火災で、業務上過失致死ではなく、殺人容疑での捜査は異例、それだけ「ホテルプリンス」の対応が悪質だったということか。

 福山ホテル火災殺人事件と、東電福島原発事故および放射能ばら撒き事件、事件の重大性を考えれば、

 東電および東芝、GE、日立、保安院などを、傷害・殺人未遂・器物損壊、せめて業務上過失致傷などで捜査、立件しないことは、何か不当な圧力に拠るものと思わざるを得ない。

 それにしても、こういった事件、事故が起こるたびに、いい加減なお役所仕事が露見する。

 防火不備のまま営業を続けたホテル関係者を殺人罪に問うなら、
査察などで防火不備の現状を認識しながら放置し、十分な指導を行わなかった、消防や福山市当局の責任者も、殺人幇助の罪で裁くべきだろう。

 YOMIURI ONLINE関西発より
福山ホテル火災7人死亡 防火不備のまま営業
【 13日午前7時頃、広島県福山市西桜町1の「ホテルプリンス」から出火していると119番があり、一部4階建ての約1360平方メートルを全焼した。宿泊客計13人のうち男性3人、女性4人の計7人が死亡し、女性客2人と女性従業員(75)が重傷を負った。県警福山東署は身元確認を急ぎ、火災報知機などの設備に不備があったとみて調べるとともに、事件の可能性も含めて被疑者不詳のまま殺人容疑で現場の検証令状を請求、捜査を進める。一方、福山地区消防組合消防局は13日夜、福山市の担当者とともに記者会見し、「査察などで対応が不十分だった」と明らかにした。


煙を上げて燃えるホテル(13日午前7時41分、広島県福山市で)=提供写真
 ホテルは1960年からあった木造2階建てに、68年完成の鉄筋コンクリート一部4階建てをつないだ構造。2階に客室12室、3階に6室があり、1階はフロントや厨房
ちゅうぼう
、駐車場などがある。消防などによると、フロントや2階客室が激しく燃えていた。

 当時は2階6室に計10人、3階2室に計3人が宿泊し、1人で勤務していた女性従業員は1階にいた。20~70歳代とみられる計10人が病院に搬送され、2階の5人と3階の2人が死亡した。犠牲者の多くは一酸化炭素(CO)中毒で死亡したとみられ、県警は、煙に巻かれて逃げ遅れたとみている。ほかの客4人は無事だった。

 消防団員の話では、窓の部分を内側から板で塞いでいた客室もあった。廊下に窓はなく、ホテル内に煙が充満し、救助にも手間取ったという。二つの階段は大人がようやくすれ違えるほどの幅だった。外の非常階段はなかった。ホテルに火災報知機はあるが、客は「聞こえなかった」と証言。避難誘導もなかったという。

 ホテルは同市内の有限会社が経営し、ラブホテルとして営業許可を受けている。ホームページによると宿泊料金は3900~5700円で、カップルやビジネス客らを対象にしていた。85年以降、風俗営業法に基づく必要な申請はしていた。

 現場はJR福山駅の南西約1キロの住宅街。

市と消防、不備に是正命令出さず

 福山市は1987年9月~2011年9月に計5回、ホテルプリンスに建築基準法に基づく防災査察を行い、避難経路の確保など8項目で是正指導をした。

 同ホテルは応じなかったが、いずれもすでにある設備が法改正で適合しなくなった「既存不適格」のため、罰則のある是正命令までは出せなかったという。

 何度か宿泊したという利用者は、「廊下は大人2人がすれ違える幅しかなく、煙が充満したら逃げられないと思う」。別の利用者は、「館内に外からの光が入らず、建物全体が暗かった。どれくらいの部屋があるのかもわからない」と証言した。

 市によると、是正指導をしたのは、〈1〉停電時などに点灯して避難誘導する「非常照明設備」〈2〉天井面から80センチ以内に窓などを設ける「排煙設備」〈3〉内装に不燃、難燃材を使う「内装制限」――などの不備だった。

 福山地区消防組合消防局も消防法に基づく立ち入り査察を67~03年に1~2年間隔で行い、ほぼ毎回、改善指導をしていた。

 03年9月の査察では、〈1〉停電時に屋内消火栓を作動させる電源がない〈2〉避難訓練をしていない〈3〉消防設備の点検報告をしていない――などの問題点を指摘。しかし、改善されなかったとみられる。

 福山地区消防組合消防局は13日夜記者会見し、消防局が2003年9月に行った査察で消火設備の不備や建築上の問題を確認しながら指導にとどめ、その後、立ち入り検査を行っていなかったことを明らかにした。

 内規では2年に1回程度は査察をする対象になっていたが、吉沢浩一・消防局予防課長は「対象施設が多すぎ、人手も足りなかった」と釈明した。

 火災報知機の警報音が宿泊者らに聞こえなかった点について、南消防署の横山宏道署長は「電源が止められていたためか、元々何らかの不備があったのか、原因はわからない」と述べた。

 避難経路の確保など建築基準法に基づく8項目の不備について、「既存不適格」のために、市が罰則のある是正命令をホテルプリンスに出せなかった点について、市建築指導課の高橋正樹課長は「改善してもらえるよう、もっと管理者に働きかけるべきだったが、強制力はなく、制度上の問題もあった」と話した。】