福島が抱える内部矛盾を、メディア関係者がこれ程まで真剣に考えていたのか!?
原発事故以来、安全デマを流した続けたメディアには不信感しかなかったが、この記事を読んでちょっと見直した。

 自主避難者を取り上げると、「県外への避難を奨励しているのか」と見られ、青森の農家が福島の子供たちにリンゴをプレゼントしたというニュースには、「果樹王国・福島のリンゴは食べられないと言うのか」

 農作物について報道すると、母親の視聴者からは「本当に安全なのか」と問われ、農家からは「これじゃあ、ますます売れなくなる」というクレームが・・

 yomiuri・onlineより
【 東京電力の福島第一原発事故と放射能汚染では、私が住む千葉県柏市も「ホットスポット」とされているだけに、福島県の人たちの苦悩は他人事ではない。

 多くの福島県民は低線量被曝のリスクを心配しながら住み続け、避難先から帰還したくても帰れない人、自主避難し、家族と離れて暮らしている人たちもいる。さらに、農作物などの生産・出荷停止や風評被害、観光客の激減などにも苦しめられている。

 こうした現実に対し、テレビは何ができるのだろう。

 「メディアは福島にどう向き合うのか~対立と分断を生まないために~」と題して4月20日、東京で開かれたNHK放送文化研究所のシンポジウムは、福島の現状を報道する難しさと課題を浮かび上がらせた。

 昨年6月、NHK社会部の震災担当デスクから福島放送局に赴任した木村功二・放送部副部長は
「思いもかけない県民の反応に戸惑っている」と率直に発言した。 

 自主避難者を取り上げると、「県外への避難を奨励しているのか」と見られ、青森の農家が福島の子供たちにリンゴをプレゼントしたというニュースには、「果樹王国・福島のリンゴは食べられないと言うのか」と文句をつけられた。

 そのうえで、「自主避難している人も『自分たちだけが安全なところに逃げていいのか』というジレンマを抱えている」と報告した。

 同じくパネリストの村上雅信・福島中央テレビ記者も、ジレンマに悩んでいる。例えば、農作物について報道すると、母親の視聴者からは「本当に安全なのか」と問われ、農家からは「これじゃあ、ますます売れなくなる」というクレームが来るからだ。

 シンポでは、県民の間で「対立と分断」を招きかねない数々の要素が列挙された。避難指示区域は、年間被曝量によって「帰還困難区域」や「避難指示解除準備区域」など3区域に再編される。

 地理的には、原発立地自治体か否か、福島県内か県外かという違いもある。それらに加えて、放射性物質で汚染された土の除染作業の進行状況、その中間貯蔵施設の建設地、補償金の問題まで横たわっている。

 低線量被曝のリスクをめぐっても、自主避難、農作物などの生産の自粛・廃棄、地元産の食べ物の消費で、県民の判断や選択が分かれる。

 「両論併記しかないのか」という問いに対し、評論家の武田徹さんは「両論併記はいっそう対立を招く。どうリスクを取るかは個人が決めること。自己決定を認め合う社会であるべきだ」という原則論を語った。

 3人の福島県出身者からは、厳しい意見や注文が出された。『「フクシマ論』 原子力ムラはなぜ生まれたのか』で毎日出版文化賞を受けた若手の社会学者・開沼(かいぬま)博さんは「マスメディアの報道は『涙を誘う悲劇とささやかな希望』というわかりやすい話に収まっているのではないか。

 また、特定の被災地や被災者をブランド化し、その美化と消費に走っている。そうした報道への自己検証はほとんどされていない」と指摘した。

 福島大の天野和彦・特任准教授(うつくしまふくしま未来支援センター)は原発事故の避難者を支援する立場から、「高齢者や子供たちのように、自分で声を挙げられない『声なき声』に耳を傾けるとともに、復興政策に地元の意見を反映させてほしい」と求めた。

 東日本大震災から1年以上たった今、復興をめぐるニュースは政府の方針をはじめとして東京発が圧倒的に多く、福島など被災地からの全国発信は減ってきたように見える。

 今回のシンポでは、NHKのEテレの『青春リアル』(木曜夜11時30分)が昨年6月から始めた月1回の「福島をずっと見ているTV」シリーズも紹介された。この番組は若者たちの現在と本音を描くドキュメンタリーだが、「福島をずっと見ている」とは思い切った宣言であり、視聴者への約束でもある。その意気や善し、としたい。】