東電に対し約8700万円の損害賠償と、放射性物質の除染を求めた二本松市のゴルフ場の訴えは、
ご存知のように、東京地裁によって門前払いされてしまいました。

 しかし、世間の常識と照らして、毒性の強い放射能をばら撒いた東電に、全く責任がないとする「東京地裁」の裁判官の判断は、非常識そのものと言えます。

 だからこそ、裁判員裁判が必要とされたのかもしれませんが、この裁判が、裁判員裁判では無かった事は、非常に残念です。

 もしこれが裁判員裁判ならば、結果は180度変わって、被告の東電に対し間違いなく「約8700万円の損害賠償と、放射性物質の除染」を命ずる判決が出た筈です。

 どうして、日本の裁判所は、国策が絡むと、こんな非常識な判決を繰り返すのでしょうか?
もう一度、裁判官、検事、弁護士の人たちには、世間の社会常識を叩き込む必要がありそうですね。

 更に言えば、「放射性物質汚染対処特措法」には、
【 (原子力事業者の責務)
第五条 関係原子力事業者は、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関し、誠意をもって必要な
措置を講ずるとともに、国又は地方公共団体が実施する事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に
関する施策に協力しなければならない。

(関係原子力事業者による廃棄物の処理等)
第九条 事故に係る原子力事業所内の廃棄物の処理並びに土壌等の除染等の措置及びこれに伴い生じた土壌の処理並びに事故により当該原子力事業所外に飛散したコンクリートの破片その他の廃棄物の処理は、次
節及び第三節の規定にかかわらず、関係原子力事業者が行うものとする。
(関係原子力事業者による協力措置)
第十条 関係原子力事業者は、この法律に基づく措置が的確かつ円滑に行われるようにするため、専門的知
識及び技術を有する者の派遣、当該措置を行うために必要な放射線障害防護用器具その他の資材又は機材
であって環境省令で定めるものの貸与その他必要な措置(以下「協力措置」という。)を講じなければな
らない。

(この法律に基づく措置の費用負担)
第四十四条 事故由来放射性物質による環境の汚染に対処するためこの法律に基づき講ぜられる措置は、原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)第三条第一項の規定により関係原子力事
業者が賠償する責めに任ずべき損害に係るものとして、当該関係原子力事業者の負担の下に実施されるも
のとする。
2 関係原子力事業者は、前項の措置に要する費用について請求又は求償があったときは、速やかに支払う
よう努めなければならない。】

 はっきりと、事故を起こした東電の責務に付いて書かれています。

 東京地裁は、この法律を、唯の飾りだとでも言うのでしょうか? 二本松市のゴルフ場側の弁護士さんは、
この法律をご存知無いのでしょうか? この裁判は、不思議なことばかりです。

 もっと不思議なのは、私の他には誰ひとり、この法律に書かれた東電の責務に触れようとはしないことです。
現代ビジネスさんも、これだけ東電を叩きながら、この法律には一切触れていません。何故なのでしょうか?
 
 現代ビジネスより
【裁判は言葉遊びの場ではない。まして、問題は人の命に関わる原発事故なのだ。「セシウムはウチの所有物じゃないので、飛び散った分の責任は持てません」。この理屈、本気で言ってるんですか?

さすがに、この東電サイドの「セシウム無主物論」は、東京地裁に認められなかった。裁判所も詭弁が過ぎると判定したのだろう。

 しかし、裁判の「結果」は別だ。サンフィールド社が求めた除染実施の仮処分申し立ては、10月31日の決定で却下されてしまった。

 東京地裁(福島政幸裁判長)は、「サンフィールド社が東電に除染を求める権利はある」としながら、
一方で「除染は国や自治体が行うもの」だから、東電はやるべきではない、だから申し立ては認められない、
というのである。

 では、国や自治体が東電に代わってすぐに除染をしてくれるのかと言えば、そうでもない。「除染の方法や
これによる廃棄物の処理の具体的なあり方がいまだ確立していない」ので、すぐにできないという。

 同様に、8700万円の休業補償の請求についてもあっさり却下された。こちらも東電の主張そのまま、
「文部科学省が4月に出した学校の校庭使用基準である毎時3.8マイクロシーベルトを下回っているから、ゴルフ場を休業する必要はない」と言うのである。

「4月の文科省の基準はもともと暫定値。実際に8月には、『年間1ミリシーベルト以下、毎時1マイクロシーベルト以下』と変更になりました。被曝線量がそれを超えた場合、速やかに除染せよ、というのが新たな文科省の見解です。

 にもかかわらず、10月末に出た決定で、なんで『毎時3.8マイクロシーベルト』の基準が根拠になるのか、
意味が分かりません」

 「これまで原子力関係の裁判で、国が敗訴したことはありません。裁判官の世界も、国を困らせないような
判決を出すことで出世していくシステムができている。原子力の問題に関しては三権分立など存在しないと
考えたほうがいい」

 もし東電が敗訴すれば、同様の訴訟が各地で一斉に起こり、収拾がつかなくなる。結果的に困るのは、
東電が処理しきれない賠償を肩代わりすることになる国だ。だから、敗訴させるわけにはいかない---。

 しかし、それでは原発事故の被害者はいつまでたっても救われない。福島県いわき市で、事故の影響を受けた人々や企業を支援している弁護士の渡辺淑彦氏は、こう訴える。

 「今後、原発事故の裁判が、かつての公害訴訟のように、時間ばかりかかって賠償されない、という事態に
なるのを怖れています。

 風評被害により、地元企業には経営難が広がっていて、リストラされ無収入になってしまった人も増えています。今後、そうした人がどんどん増えていくでしょう。】

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