毎日JPより
【東京電力福島第1原発事故で全面的に止まっていた福島県の沿岸漁業が、5カ月ぶりに動き出すことになった。
 県内7漁協でつくる福島県漁業協同組合連合会(県漁連・野崎哲会長)は早ければ今月下旬にも刺し網漁を試験的に再開する。同県海域ではまだ一部の魚種に放射線の影響があり、予想される風評被害に挑む船出となる。

 福島県では6月に沖合漁が始まったが、近隣海域で操業する沿岸漁は自粛。ウニ・アワビ漁は漁期の5~8月の全面中止を決め、主力の底引き網漁は自粛したまま7、8月の休漁期に入った。休漁期のない刺し網漁は影響を受け続けている。県漁連によると、東電の仮払いやがれき処理の日当で生活をつなぐ漁師も多いという。

 7月27日に開かれた県漁連組合長会では「規制値以下でも買い手がつかない」「畜産のような問題が起きないか」と慎重な声があった。

 一方で「一日も早く漁に出たい」との意見も噴出。結局、県北部の相馬沖では検出値が安定していることから、相馬双葉漁協が8月中にも刺し網漁を試験的に再開すると決めた。刺し網漁は小型船で魚群の遊泳する水域に網を張る漁法で、福島県海域ではヒラメやカレイなどが主に取れる。

 8月10日に発表された県などの最新モニタリング結果では、食品衛生法の暫定規制値(1キロあたり500ベクレル)を上回る放射性セシウムを検出したのは調査対象となっている44種のうちアユだけ。今後はさらに細かい調査を続けながら、具体的な漁場や捕獲魚種を検討。

 同時に、県に対しては週1回のモニタリング調査を水揚げごとに魚市場で実施するよう要望している。

 当面の出漁は数隻となる見通しで、魚は地元の朝市などで販売しつつ消費者の反応を確かめるという。野崎会長は「風評被害を生まないよう検査態勢を整備して、本格的な操業につなげたい」と話している。

 ◇ローン抱え、海にも出られず焦り
 刺し網漁の試験操業に向け、漁師たちの胸には期待と不安が交錯する。消費者は魚を買ってくれるのか。手探りの一歩を踏み出す「海の男」は複雑な表情を浮かべる。

 相馬双葉漁協原釜支所(福島県相馬市)第1船主会の菊地正記会長(55)は3月11日、津波を避けるため仲間と沖に船を出して難を逃れた。自宅は基礎部分を残して跡形もなくなり、3年前まで一緒に刺し網漁をしていた父完(たもつ)さん(78)は逃げ遅れて亡くなった。

 元々は底引き網船に乗っていたが、菊地さんが25歳の時に小型船を購入した。「2人で30年かけてやっとここまで来たのに」。現在は市内の仮設住宅で母、妻と3人で暮らす。

 同支所では刺し網漁をしていた漁師の船約200隻の半数が流され、沿岸には今も大破した漁船が浮かぶ。原発事故で収入を絶たれた漁師たちは毎朝午前4時から10時半ごろまで、漁場に堆積(たいせき)したがれきの撤去作業に汗を流す。

 日当は1万2000円。菊地さんは「これからシラスの最盛期。1回漁に出たら20万~30万円になるんだが」とつぶやく。昨年買った漁船の代金と自宅のローンで約2500万円の支払いが残る。

 海に出て、魚を取ってこそ漁師だ。「一番いい時期に海に出られないなんてやってられない」。一刻も早く再開したいとの思いは募るが、セシウム汚染に苦しむ畜産農家の姿に「まだ早過ぎるのでは」と不安もよぎる。
「もちろんうれしさもあるけど、今後どうなるのか」。手放しでは喜べないという。】

 はたして、放射能の海産物に対する影響はどれほどなのか?
福島の漁師さんたちの生活が係った、試験的な操業再開だが、セシウム汚染牛の二の舞にならないことを祈るのみだ。

 仮に海産物が、放射能に汚染されていて、消費者の健康が保障できないのならば、漁協は、直ちに操業を停止させ、東電に組合員の生活の補償を求めていただきたい。