秋田魁新報社説
【恐れていた事態が日々、現実となりつつある。東日本の広範囲にわたる放射性物質の拡散だ。福島第1原発事故で大量に放出されたセシウムなどの放射性物質は、原発から200キロ余り離れた本県に住む私たちの日常生活をも脅かしている。
放射性物質は牛の餌となるわらを汚染、それを与えられていた牛の肉からもセシウムが検出された。政府による出荷停止は福島、宮城、岩手、栃木の4県に及ぶ。こうした牛肉は県内の店舗でも売られ、消費者の手に渡った。
出荷された牛の一部でも保管されていれば検査は可能だ。だが全てが消費されていれば、それもできない。汚染牛肉を食べたのが幼児や児童であれば、放射性物質によるリスクは大人よりも大きくなる。出荷停止措置は、あまりに遅きに失した。
千葉県からはセシウムで汚染された大量の焼却灰が県内に運び込まれ、小坂町で約40トンが埋め立てられた。栃木県産腐葉土からも高濃度のセシウムを検出。秋田市の小学校ではプランターに使用した同県産腐葉土から、国の暫定基準値を超すセシウムが出た。子どもたちが心を込めて植物を育てているプランターが、放射性物質に汚染されていたのである。腐葉土の製造元は自主回収を始めたが、これも遅過ぎる対応だ。
ドイツ気象庁は、福島原発からの放射性物質拡散予測をホームページで公開した。拡散は気象条件に大きく左右され、放射性物質が複雑に広がる様子が手に取るように分かる。同じ一日でも、ある時刻は太平洋側に流れ、別の時刻には渦のように巻き込みながら東北地方を覆っていた。東日本が広く汚染される恐れがあることは予測できたのである。
原発事故で大量の放射性物質が放出されれば、いかに広範かつ長期にわたって被害が及ぶかは、1986年のチェルノブイリ事故が示している。がんによる死者は最大で推定9千人とも、9万人超ともいわれる。25年たった今日もウクライナ、ベラルーシ、ロシアの3カ国では約600万人が汚染地域で生活、健康被害が増え続けているという。事故後の数年間、食肉製品やワイン、チーズなどヨーロッパから日本に輸入された多くの食品に汚染が確認された。
広がりを見せる日本国内での放射性物質による汚染に、人々の不安は募る。今年収穫されるコメを対象とする農林水産省の放射性物質濃度検査には本県も追加され、対象自治体は北東北3県を含む17都県にも及ぶ。
国は、東日本全域で航空機による放射線量調査を行うことを決めた。国と自治体は汚染地域だけでなく、汚染の可能性がある食品を徹底調査し公表、リスク情報と安全情報を迅速に提供するべきだ。放射性物質が国土と海に拡散した今日、私たちの生活を守るには汚染の事実を知ることから始めるしかない。】
何も言い足すことがない、まったくその通り。
【恐れていた事態が日々、現実となりつつある。東日本の広範囲にわたる放射性物質の拡散だ。福島第1原発事故で大量に放出されたセシウムなどの放射性物質は、原発から200キロ余り離れた本県に住む私たちの日常生活をも脅かしている。
放射性物質は牛の餌となるわらを汚染、それを与えられていた牛の肉からもセシウムが検出された。政府による出荷停止は福島、宮城、岩手、栃木の4県に及ぶ。こうした牛肉は県内の店舗でも売られ、消費者の手に渡った。
出荷された牛の一部でも保管されていれば検査は可能だ。だが全てが消費されていれば、それもできない。汚染牛肉を食べたのが幼児や児童であれば、放射性物質によるリスクは大人よりも大きくなる。出荷停止措置は、あまりに遅きに失した。
千葉県からはセシウムで汚染された大量の焼却灰が県内に運び込まれ、小坂町で約40トンが埋め立てられた。栃木県産腐葉土からも高濃度のセシウムを検出。秋田市の小学校ではプランターに使用した同県産腐葉土から、国の暫定基準値を超すセシウムが出た。子どもたちが心を込めて植物を育てているプランターが、放射性物質に汚染されていたのである。腐葉土の製造元は自主回収を始めたが、これも遅過ぎる対応だ。
ドイツ気象庁は、福島原発からの放射性物質拡散予測をホームページで公開した。拡散は気象条件に大きく左右され、放射性物質が複雑に広がる様子が手に取るように分かる。同じ一日でも、ある時刻は太平洋側に流れ、別の時刻には渦のように巻き込みながら東北地方を覆っていた。東日本が広く汚染される恐れがあることは予測できたのである。
原発事故で大量の放射性物質が放出されれば、いかに広範かつ長期にわたって被害が及ぶかは、1986年のチェルノブイリ事故が示している。がんによる死者は最大で推定9千人とも、9万人超ともいわれる。25年たった今日もウクライナ、ベラルーシ、ロシアの3カ国では約600万人が汚染地域で生活、健康被害が増え続けているという。事故後の数年間、食肉製品やワイン、チーズなどヨーロッパから日本に輸入された多くの食品に汚染が確認された。
広がりを見せる日本国内での放射性物質による汚染に、人々の不安は募る。今年収穫されるコメを対象とする農林水産省の放射性物質濃度検査には本県も追加され、対象自治体は北東北3県を含む17都県にも及ぶ。
国は、東日本全域で航空機による放射線量調査を行うことを決めた。国と自治体は汚染地域だけでなく、汚染の可能性がある食品を徹底調査し公表、リスク情報と安全情報を迅速に提供するべきだ。放射性物質が国土と海に拡散した今日、私たちの生活を守るには汚染の事実を知ることから始めるしかない。】
何も言い足すことがない、まったくその通り。