東京電力が企画した映画「福島の原子力」必見です。
【2年ほど前、青森県で建設されている大間原発を見学した。原子炉の土台をつくっている現場では、その巨大さと堅牢ぶりに圧倒されたのを覚えている。
東日本大震災で事故を起こした福島第一原発の映像をテレビで見た時、大間原発の建設現場が頭に浮かんだ。無残な姿をさらしている1~4号機も、40年前、大間と同じように大がかりな工事で建設されたのだろう。いまとなっては想像するしかないけれど--と思っていたら、あったのだ。1号機の建設当時の映像が。東京電力が企画した映画「福島の原子力」。NPO法人・科学映像館のサイト(http://www.kagakueizo.org/2011/01/post-332.html)で無料視聴できる。
原子炉の圧力容器や格納容器の製造や組み立て、据えつけ、燃料棒の装荷なども紹介されていて、30分弱にわたって興味深い場面が続く。「原発はこんなに頑丈で安全なのですよ」というのが、この映画のメッセージだ。おそらく、3.11以前には、そういうメッセージを素直に受け取った人も少なくなかったに違いない。当時の人々は、まさかこの原発がレベル7の大事故を起こすなんて予想もしていなかっただろう。
だが、3.11以後、次々に起きる想定外の事態を目撃してきた私たちは、「この炉心が溶けてしまったのか」「この圧力容器から燃料が漏れているんだなあ」とリアルで複雑な気分になる。だから、映画から読み取るメッセージも、つくり手の意図とは真逆になる。「どんなに頑丈につくっても、どんなに安全対策を施してていも、事故を防ぐことはできない」
原発の安全性をアピールするためにつくられた映画で、原発の危うさを感じてしまう。なんとも皮肉なものだ。
震災後、この映画を十数人の大学生とともにみる機会があった。映画の後、原発についてどう思うか尋ねてみると、「事故が起きると放射能がまき散らされるから、原発に依存しない方が望ましい」という声が目立った。
その一方で、「原発がないと地球温暖化を防げなくなる」といった不安の声も少なくなかった。チェルノブイリ事故のころ学生だった私のような世代とは違い、いまの若者たちにとって、原発を環境問題に対処するツールとみなすことにそれほど抵抗感はない。福島で事故が起きるまで、原発の危うさをリアルに知ることがなかったからかもしれない。
だが、事故は起きた。しかも、世界の歴史に刻まれるほど深刻な事故である。
いまから40年後の人々は福島第一原発の事故の映像を見て、どんな思いを抱くのか? それは、その時の日本のエネルギー事情や環境問題がどうなっているかによって大きく違ってくるだろう--。40年前の映画をみながら、そんなとりとめもないことを考えた。】
【2年ほど前、青森県で建設されている大間原発を見学した。原子炉の土台をつくっている現場では、その巨大さと堅牢ぶりに圧倒されたのを覚えている。
東日本大震災で事故を起こした福島第一原発の映像をテレビで見た時、大間原発の建設現場が頭に浮かんだ。無残な姿をさらしている1~4号機も、40年前、大間と同じように大がかりな工事で建設されたのだろう。いまとなっては想像するしかないけれど--と思っていたら、あったのだ。1号機の建設当時の映像が。東京電力が企画した映画「福島の原子力」。NPO法人・科学映像館のサイト(http://www.kagakueizo.org/2011/01/post-332.html)で無料視聴できる。
原子炉の圧力容器や格納容器の製造や組み立て、据えつけ、燃料棒の装荷なども紹介されていて、30分弱にわたって興味深い場面が続く。「原発はこんなに頑丈で安全なのですよ」というのが、この映画のメッセージだ。おそらく、3.11以前には、そういうメッセージを素直に受け取った人も少なくなかったに違いない。当時の人々は、まさかこの原発がレベル7の大事故を起こすなんて予想もしていなかっただろう。
だが、3.11以後、次々に起きる想定外の事態を目撃してきた私たちは、「この炉心が溶けてしまったのか」「この圧力容器から燃料が漏れているんだなあ」とリアルで複雑な気分になる。だから、映画から読み取るメッセージも、つくり手の意図とは真逆になる。「どんなに頑丈につくっても、どんなに安全対策を施してていも、事故を防ぐことはできない」
原発の安全性をアピールするためにつくられた映画で、原発の危うさを感じてしまう。なんとも皮肉なものだ。
震災後、この映画を十数人の大学生とともにみる機会があった。映画の後、原発についてどう思うか尋ねてみると、「事故が起きると放射能がまき散らされるから、原発に依存しない方が望ましい」という声が目立った。
その一方で、「原発がないと地球温暖化を防げなくなる」といった不安の声も少なくなかった。チェルノブイリ事故のころ学生だった私のような世代とは違い、いまの若者たちにとって、原発を環境問題に対処するツールとみなすことにそれほど抵抗感はない。福島で事故が起きるまで、原発の危うさをリアルに知ることがなかったからかもしれない。
だが、事故は起きた。しかも、世界の歴史に刻まれるほど深刻な事故である。
いまから40年後の人々は福島第一原発の事故の映像を見て、どんな思いを抱くのか? それは、その時の日本のエネルギー事情や環境問題がどうなっているかによって大きく違ってくるだろう--。40年前の映画をみながら、そんなとりとめもないことを考えた。】