河北新報より
 『不安の連鎖、農家いら立つ 宮城県産稲わらセシウム汚染』

【宮城県産の稲わらから国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出された問題は、畜産関係者に強い衝撃を与えた。「県産牛のブランドはどうなる」「汚染が続けば失業だ」。畜産農家や稲わら業者に広がる終わりの見えない不安の連鎖。対応が後手に回る行政への不満が充満している。

◎県産牛/ブランドの危機

 「畜産農家も稲わら業者も被害者。仙台牛、県産牛の最大の危機だ」。大崎市内で肉牛20頭を肥育する畜産農家の男性(56)は「これまでになく先が見えない」と不安を募らせる。
 国内市場で高い評価を得ている県産牛肉。肉質を支えているのが稲わらだけに、基準値を超えるセシウム検出のショックは大きい。

 栗原市の畜産農家は「稲わらの繊維質がないと、良質な『サシ』が入らない。牧草だけでは肉質が落ちる。稲わらの代わりになる餌はない」と困り果てる。

 福島県浅川町産の肉用牛に高濃度のセシウムを含む稲わらが与えられていた問題が明らかになって以降、肉用牛の市場価格は下落している。

 栗原市の別の畜産農家(55)は「東北の肉牛全体への風評被害が怖い。肉牛の価格が下がると、子牛を買う金もなくなる」と悪循環を恐れた。

◎行政批判/全頭検査急いで

 宮城県栗原市の大規模畜産農家は、行政の対応の遅さにいらだちを隠さない。「全頭検査の体制を整え、消費者の信頼を取り戻すことが最優先。行政がやらないなら独自の検査をやるつもりだ」と声をとがらす。

 福島県内の畜産農家が出荷した和牛から暫定基準値を超える放射性セシウムが検出されて以降、行政の対応は遅れ、生産者の不信感は高まるばかりだ。

 登米市の稲わら販売業者は、市や県に電話をかけ、わらの放射性物質測定を要請したという。「後で連絡するとのことだったが、いまだ連絡はない」と表情を曇らせる。

 「県産牛肉から基準超のセシウムは出ていない」と強調した大崎市の畜産農家も「セシウムは約2カ月後にはふん尿としてかなり排出されるとも聞く。行政は正確な情報と知識を整理して伝えてほしい」と求めた。

◎販売業者/「影響いつまで」

 稲わらを秋田、山形、新潟、三重4県の肥育農家20戸に販売している登米市の男性は「汚染が何年も続くのであれば失業してしまう。夜も眠れない」と不安を口にした。

 福島第1原発事故後、集めたわらは7ヘクタール分。稲わらの汚染が問題化して出荷を止めた。それでも販売先からは収穫時期や保管場所についての問い合わせが相次ぐ。

 事故収束の兆しは見えない。男性は「ことしの秋の稲わらが汚染されないか心配。影響はいつまで続くのか。教えてほしい」と困惑した。

 稲わらを販売している栗原市の畜産農家は、県の調査で牧草から基準値を超える放射性セシウムが検
出された段階で、稲わらの販売と自家消費を自主的にやめた。
 「稲わらを子牛に与える人もいるだろう。放射能汚染の影響は何重にも続く」と苦悶の表情を浮かべた。】

 厚生労働省や農林水産省の役所の怠慢が、放って置くと、福島、宮城に続き、新潟県にも、その他の県にも、いつ飛び火するとも限らない深刻な事態を招いた。

 食の安全・安心は、完全に覆され、消費者も疑心暗鬼になっている。
これだけ事態をこじらせてしまっては、小手先の対策は通用しないだろう。

 牛肉の相場は、壊滅的な下落で、生産者の経費さえ出ない暴落相場になっている。
今更、誰の責任と責めても始まらないが、どう事態を収拾すればいいのか途方に暮れてしまう。

 いま、出来る最善の対策は、出荷される全部の肉牛を検査して、放射能に汚染された牛肉を流通させないこと、そして、それによって被る経費、生産者の損害のすべてを、早急に東電に支払わせること。

 もし、東電が渋るなら、取り合えず国が立替してでも支払うことが肝要。