福井新聞より①
『足元の自治体で今・・・
福井県内で原発が運転を始めて40年。自治体や住民にはさまざまな形で「原発マネー」がもたらされた。生活の基盤を底上げする一方、原発への依存は強まっている。立地地域の今を見つめた。』
 【パイオニアの不満 恩恵に落差 細る財政
【国内初の加圧水型軽水炉として関西電力美浜原発1号機が立地し、11月で運転開始40年となる美浜町。「トップランナーはいろんな面で苦労がある」。山口治太郎町長の胸中には自負心と不満が複雑に絡まっている。
 理由の一つは、電力の安定供給を目指し、原発を立地した自治体などに交付される「電源三法交付金」にある。
 同制度が創設されたのは1974年度。美浜1、2号機はそれ以前から稼働を始めたため、原発の設置工事から運転開始5年後まで配分される交付金を受けられなかった。交付期間が「運転開始5年後まで」とされたのは80年度からで、76年度に運転開始の美浜3号機に対しても、交付は74~76年度の3年のみ。総額は6億5700万円で“満額支給”された大飯3、4号機の98億7300万円に遠く及ばない。

 海、湖といった嶺南の豊かな自然や、自治体の規模とは不釣り合いとも思える“ハコモノ群”。財政的な基盤となっているのは、35年間で3041億円がもたらされた電源三法交付金、本県が全国に先駆け76年度に創設した核燃料税などの「原発マネー」だ。

 道路、保育所、公民館、キャンプ場など暮らしに密着した施設やインフラにも使われた。しかし、原子力資料情報室の西尾漠共同代表は「交付金がなくなってもやっていける町づくりを進めるべきだったが、実際には目先のことに使われ続けてきた」と批判する。施設の赤字や維持管理費は財政的負担として重くのしかかるが、西尾さんは「必然だ」と手厳しい。

 ハコモノ行政を助長したのは、交付金の使途が03年度の制度改正まで公共施設や道路の整備などハード事業に限定されていたから。それでも、野瀬豊高浜町長は「他の自治体から見ると浮世離れしたことに使っている面はあった」と認める。
電源三法制度は交付金の新設と統合を繰り返し、現在は19種類からなる。県電源地域振興課の清水英男課長は「交付金は何の理屈もなく創設されているわけではなく、プルサーマル計画の推進などそれぞれ意味がある」と説明し、安易な依存ではないとする。
 しかし、原発反対県民会議の吉村清代表委員はこう批判する。「カネをもらえば何でも引き受けるという『たかりの構図』。原発マネーは麻薬みたいなものだ」】一部抜粋