産経ニュース//より
【 標高、耐水性…国・業界の想定甘く 津波のリスク、過小評価

 原子力関係者によると、日本の原発の津波対策は、想定した波高より敷地が高ければ「安全」と評価される。どの程度高ければ安全かを示す基準はない。

 津波による敷地の浸水は設計上、想定されていない。今回の事故は、非常用ディーゼル発電機の稼働に必要な海水ポンプが水没したことが一因だが、こうした電気機器の耐水性は十分に評価されていなかった。

「津波は敷地に来ない」「機器は水に漬からない」。この過信ともいえる想定に立つ以上、余裕度を高める改善策や、万一に備えて何重もの対策を講じる多重防護の発想は生まれない。津波対策は安全設計の根幹が抜け落ちていた。

 福島第1原発の建設が始まったのは昭和42年。標高約35メートルの台地を掘り下げ、同10メートルの敷地に主要施設を設置した。水没した海水ポンプは、さらに低い同4メートルの海側エリアに置かれた。

 平成14年、東電は想定を最大5・7メートルに修正。これだと海側エリアは浸水するため、海水ポンプの高さを引き上げる工事を行い「対策済み」とした。ただ、このポンプは被害が小さかった福島第2では建屋内に収納していたが、福島第1では工事後も外部にむき出しのままだった。

 津波への備えの甘さは国も同じだった。原子力安全委員会は18年に原発の耐震指針を改定した際、津波の記述は末尾2行だけで、具体策は盛り込まなかった。】

 想定の津波の高さ5.7㍍には、津波の破壊力はまったく考慮されず、満潮で5.7㍍海水面が上昇するのと同様のさざ波程度を想定していたようだ。
 これでは、津波対策などなかったも同然だ。