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ひたすら、細かい事を考えさせたいです。

コミュニケーションをデザインするための本 (電通選書)/岸 勇希
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1年前にも読んだ本。
コミュニケーションをデザインするための本|ネット広告について(仮)

きっかけがあって、改めて読み直したんですが、改めてスゴい人だなと思う。
何がすごいかっていうと、すごく細かい所までキッチリ詰め切っているということ。

たとえば、フマキラーの「一発命虫」のキャンペーンで使ったシールとか、
漢検DSの漢字バトルの結果画面の表示要素とか。

その辺のなんちゃってプランナー達は、
こういう細部の泥臭い所まで考え切れていないから、
企画全体で見ると似たようなアイディアなりプランニングをしていても、
結果として大きな違いになっているんだろうなって思う。


提案して受注するには、
大枠の仕掛けと戦略さえしっかりしていればクライアントは口説ける。

「どんだけ夢を見させられるかが営業の力だ」と言い切っている人もいたくらい。

だいたい、男性の尿の平均温度と入射角度の話なんて、
プレゼンでそんな話されてもむしろ困るわけで。

クライアントを動かすには、
戦略と仕掛けをしっかりと説明できる事が大事。

だけどユーザは、
そんな全体戦略なんて知らずにそれぞれの接点で自分勝手に解釈して動くんです。
それは、細部のちょっとした事にすごく影響されたりします。

これは、今の仕事を通じて生のユーザの行動を見て散々知らしめられた事。

たとえば、
シールの色の変化のタイミングが早すぎると、変化に気付かずスルーされてしまうとか、
変化後のグラフィックで検索窓を商品メインビジュアルの上に置いてしまうと、
最初に商品に目(+尿)がいってしまい、検索窓がスルーされてしまって検索されないとか。
(適当に書いてます)

こういう細かい事までしっかり考え抜いて対策を打つことが、
ユーザを動かせるかどうか(=結果)に大きく影響したりします。

クライアントファーストの広告営業をやっていた時には、この視点が完全に欠落してました。
いや、考えてるつもりではあるんです。でも、実際のユーザの動きなんて見た事無いし。

CPA運用の時は、ボタンの色の違いでCTRが2倍になります!とか言ってるクセに、
コミュニケーションプランの提案になると、ボタンの色の事なんて考えもしないし、
営業だったんで、提案の時に全力出してしまうので、提案の時に考えなかったことを、
実行の時にディレクションできるわけもなく。

戦略とか、仕掛けとか、企画とか、大きい事を考えてる方が楽しいし、
ウケるし、褒められるし、飲み屋でも語れるし、自我も満たされるんです。
俺の企画だぜってな感じで。

なので、
学生にアプローチするのに、タダコピ使いましょう、みたいなレイヤーと、
コピーの裏紙をどうすればより気にしてもらいやすくなるか、みたいなレイヤーだったら、

前者まで考えられても考えるけど、後者まで考えられる人が果たしてどれくらいいるのか?
というのが本日一番言いたかった事です。


この電通の岸さんという方がスゴイのは、
本当にそこまで考えるかという細かい点まで、上流の戦略から一貫して詰め切れていること。
なんかもう病的に、そこは自分の仕事だと言い切ってる。


でもさ、これって、ネット広告で日々CPAを追っていたような人こそ、
わかってなきゃいけないし、できなきゃいけない事なんだと思う。

だって、バナーの訴求でのCTRやらCVRで一喜一憂してたわけで、
その細部が結果に及ぼす影響力をイタい程身体でわかってるじゃん。
だって色変えるだけで結果2倍でお客さんあんなに喜んだじゃん。

それこそが、
ネット広告代理店がマス代理店に対して大きなアドバンテージがあるはずの部分、
(特にネットにおいて)細部の価値を身体で知っているのでこだわり抜いて本当の結果を出せる、
という能力なんだと思います。

だけど、レイヤーあがって、そういう提案をする時には、
自身のCPA時代を暗黒の歴史だと勝手に思い込み、
気分はマス代理店マンみたいにになって
シカケを作りましょう、戦略はこうです!芸能人使ってクチコミがおきてドカーン!
みたいな話ばかりしてしまう。

だって、そういうシカケとか戦略とか、企画に憧れてたんだもの。

もう、バナーは何色とか、33文字にどんな要素を盛り込むかとかの話はしたくないっす。
コミュニケーションプランで空気作って、世の中変えたいっす。

そういう広告代理店的格好良さみたいな問題がひとつ。


もう一つは、CPA最適化やってる時に、
それがユーザコミュニケーションである事を自覚できてない事。

だって、CTR3.5%と4.2%のT&Dとか思いっきり数字だけ見て語られるし、
それを集計するのにに徹夜とかしてんだもん。
そんなの4.2%残して次に行きましょうで話を終わらせたいよ。

その3.5%を1人1人のユーザとのコミュニケーションの結果の
累積として捕らえて分析する暇なんてない。

だから、その背景にある1人のユーザの状況や心理の文脈に思いを馳せることなんてない。

全体がどういう戦略で、どういうコミュニケーション設計になっているから、
この接点では、ユーザはこういう状況で、こういう気持ちだから、こういう事を期待しているはずで、
その上で、何を知りたくてA案とB案をスプリットランしていて、
結果としてBの方が良い場合は、こういう仮説が考えられるので、
もっと前の段階で、こういう心理になってもらえるような訴求が必要なので、
その最適な方法を探るために次はこういう検証して、という事を考えて仕事なんてできません。

せいぜい体験の中から導かれた「バナーは黒がいい」みたいな謎の迷信を得意気に語り、
ネットを知ってる風な雰囲気を醸し出せるようになるのが関の山。

役割分担が細分化されすぎていて、その上、とっても忙しいし、
ミッションも売上の増加で広告効果を上げる事ではないので、
せっかく細部の威力を知り血肉にしていける機会を持っているのに、
その細部の全体における位置づけもユーザも見えてないんじゃないかな。
わかった気にはなってるけど。

・・・もっと書きたい事はたくさんあるけど、
夏休みが終わってしまったので、あとは飲みながら話しましょう。