学生時代の夏は2年からバイト一色だった、といつぞや書いたが、そんな中で高知に数日間滞在したのが平成元年。その年、高知でインターハイが開催された。数年前から64総体と呼ばれていた地元の大イベントだったが、昭和天皇の崩御により64という昭和の年号が外れた。翌年には全中も開催され、そのために老朽化が進んでいた高知市営プールは1987年か1988年をもって取り壊され、春野に新しいプールが完成した。高知市営プールは1932年北村久寿雄さんが金メダルを獲得したことを記念して1936年に完成したプールだから、そりゃ古い。井戸水だから、そりゃ冷たい。でも、高知で競泳をしていた私には決して潰して欲しくない想い出の塊だった。


しかし、春野のプールも見てみたくてインターハイに行くことにした。ただ、いつも泊まっていたセントウさん宅が都合が合わず泊まれない。さあ、どうする? そんな時、中村高校の水泳部で私と同期にあたるヒサトが浪人中で高知市内にアパートを借りているという。ダメもとで訊ねてみると、快諾してもらい4泊させてもらった。


肝心のインターハイよりも、この夏はヒサトの部屋が最も印象的だった。学校は違うが仲も良く、高校2年の頃には中村の彼の家に泊まりに行ったこともある。彼は本当によく喋る男で、いつまでま何かしらを話し続けていた。あまりにうるさくて、彼のラジカセをつける。音楽に助けを求めたのだった。すると、いきなり印象的な曲が聴こえてきた。凝り性の私としては、ずっとその曲を繰り返した。帰京してから貸しCDを探し録音した。


そういえば、ヒサトはその夏から一回も会っていない。


どこで何をしているのやら…


「駅」 ECHOES