高校1年の修学旅行。ツカジが頻りに洋楽を勧めてくる。聴かせてくる。はじめの2日間は東京の品川泊だったが、ホテルなのに10人くらいが詰め込まれる和室で、まあまあごった返していた。3日目の軽井沢、5日目の京都、6日目の大阪はイケと二人部屋。4日目の諏訪湖はごった返し部屋だった。その、ごった返しの中でツカジが洋楽をひたすら聴いていた。マエダもそこに乗っかって話を盛り上げる。おいおい、洋楽、みんなそんなに好きなんや…。でも、解説というかプレゼンは見事だった。結局、それから洋楽のレコードも結構買ったし、洋楽を集めたカセットは40本くらいにまでなる。


ああ、これがや洋楽デビューなのかと、ふと思い返すと…特にブームだったわけでもないが、中1の時にサイモン&ガーファンクル、中2の時にはミッシェルポルナレフにハマったこともあったじゃないか、と気づく。サイモン&ガーファンクルは有名な曲が多かったので父の「世界の名盤」にもアルバムが2枚収録されていたので、20曲は聴いたか。広島を離れる寂しさと困惑の中、それでも、夜はラジオを聴きまくる。ボーッとしていると勝手に涙が溢れそうだったので、何かに夢中になりたかった。FM以外のラジオは事前にどんな曲がかかるかわからない。ラジオで好きそうな曲が流れそうになると録音ボタンを押していた頃だから、一瞬も気を抜けない。


ある晩、聴いたことのある名前が聞こえた。とはいえ、私の知っている名前に、付け加えてある。誰やねん? あいつか? でも…。とにかく録っとくか!


声は確かに同じアーティストだった。どうやら、ソロでアルバムを出したらしい。あんまり知識がないものだから、ソロという概念もあまり浮かばなかったし、あまりにも2人のユニット名が有名すぎてフルネームを知らなかったのだ。


聴いた瞬間。


あっ、これ好き…。


その1週間後、アルバムをフルでFMがかけてくれた。「シザーズ・カット」というアルバムが、カセットにおさめられた初めての洋楽アルバムだった。高い声が美しい男性ボーカルの声は今聴いても沁みる。


「北風のラストレター」 アート・ガーファンクル