友人のバンデワーレに誘われて一夏の大冒険…に付き添った夏。私は単なる付き添いだ。彼は世界選手権に出るために「父国」ベルギーでの大会出場を義務付けられ、ベルギー選手権に出場することになった。そこで、「競泳を知っており、英語がそこそこわかり、友人で、且つヒマ」なやつという条件に私が合致したのだった。詳しくは拙著「二つの母国」(鳥影社…とっくの昔に廃刊。現在は古本がAmazon等にて)、「もう一つの引退試合」(パーフェクトランス…無論、こちらもとうの昔に品切れ…)に書いているので避ける。


3週間弱をともに彼と過ごした。昼はヘッドフォーンステレオで日本から持参したカセットを聴くのが暇潰し。だが、荷物のスペースの関係で持っていったカセットは10本もなかったと思う。飽きる。いくら好きな曲でも、飽きる。そこで、ベルギーに着いて5日くらいしてから時折、互いのカセットを交換した。音楽の趣味は近かったので、借りたカセットの曲は大体知っていた。しかし、知らない曲もあり、それはかなりの確率で「好き」な曲になった。中でも、好きだったアーティストなのに、知らなかったアルバムの一曲はベルギーの青い青い空が似合っていた。朝は4時くらいから、夜は22時くらいまで明るかった空。雨は一回も降らなかった。なぜ、こんな素敵な場所だし、素敵な時間なのに、女の子と一緒じゃないんだ!と思いつつ。これは、彼も同じ感じだったらしいが。


「すき」 渡辺美里