ドアに浮かび上がる愛輪の残像を、まだ本主は見つめていた。


その時だった!


🚪バタンッ💨💨💨


誰か、入ってきた。


本主は、額に💢を浮かべ、目を閉じて、ため息をついた。


せっかくの残像が、ぶち壊された。


そこにいたのは、海松葉その人だった。まるで、ボーリングのピン🎳みたいな体型だ。


頭が体格より小さく、しかも細長い。シワだらけの顔に、ギラギラした眼差しを突き刺してくる。


海松葉「お前が素人のヘボ探偵・本主か?」


本主「以前にも、一人。同じドアの開け方で入ってきた人物がいましたよ。彼については、敬愛の念もありましたがね。」


海松葉「質問に答えろ!お前が本主か?それとも、この汗臭そうな野郎か?それとも、そこのデブか?」


本主「しかし、彼とのオセロゲームは、なかなか楽しかった。」


海松葉「そうかい。そうかい。答えないつもりだな?だが、お前が本主だろう。隠しても無駄だぞ!」


海松葉は、ポケットから📱を取り出し、本主を撮影した。


海松葉「今、調べてやるからな。ホッホホ~😏お前じゃないか!我がAI技術を駆使した、わしだけの人物データ庫で検索をしたら一発だ。新たな標的として、スペシャル枠に登録しといてやる。うちの屋敷に入れば、センサーが真っ先に反応してくれるだろう。」


本主は呆れて、自分のデスクに座り、奴を無視して資料を開いた。


海松葉「ずいぶんな態度だな。お前は立場が分かっとらん💢誰に向かって、そんな態度を取ってるか!よし。それなら、やってやるぞ!お前に執拗に付きまとい、嫌がらせの限りを尽くしてやる。日々の退屈凌ぎが出来て、わしゃ幸せだわい。」


本主は、海松葉を無視し、資料を読み続けた。


丸越も、磐田とともに別室へ移った。


海松葉「ハハハ!恐怖のあまり、お前の助手たちは逃げたぞ?お前を追い詰めてやる!わしゃ、お前の犯罪を知っているぞ?犯人を匿い、最後は逃がしたんだ。証拠は、揃っているぞ!これがスキャンダルになれば、すぐに廃業だ。わしゃ、探偵が大嫌いだ。お前の助手たちも、この旅館も、おしまいだぞ?」


海松葉は、📱の画面を開いた。


いつぞや本主が手掛けた事件で、彼が匿って逃がした犯人からの御礼のハガキが、📱に映っていた。


本主の近くへ行き、見ろ!とばかりに画面をかざした。


本主は一瞥し、便箋を取り出して、手紙を書き始めた。


海松葉「ククク😏郵便局員もわしに弱みを握られとるからな。お前のことなど、知ったこっちゃない。お前に関する内容あらば、こうして画像が送られてくるんじゃ!お前が助けた犯人は、かなりなバカのようだな。お前を窮地に立たせてしまったわい。」


本主は、なおも無視し、手紙を書き終えた。


そして、デスクの呼び鈴を鳴らした。


すると、別室の磐田がやってきた。


本主は封筒に入れた手紙を、ある郵便局から送るよう、磐田に小声で指示した。


磐田は海松葉を無視し、事務所から出て行った。


海松葉「いいか!お前みたいな素人探偵は、貧乏に違いない。金など要求するより、もっと価値ある要求を突きつけるぞ!愛輪の件から手を引け!さもないと、お前は犯人隠匿罪などで裁かれるぞ!お前らは廃業だ!旅館も閉館だ!面白過ぎるわい。ワーハッハッハ!」


本主は、全く無視して、また資料を読み始めた。


海松葉は、暖簾に腕押しとなり、鼻息をふんっ💨と出し、足を一回踏み鳴らした。


海松葉「いいか!わしをなめとったら、エラい目に遭うぞ!何人の探偵が行方不明となり、あるいは海難事故で発見されてきたか!お前は知るまい。魔守屋事件みたいに、運任せで解決するほど、わしゃ甘くはないぞ!必ず破滅させてやるからな!」


イライラしながら言うだけ言って、事務所を出て行った。


丸越が、すぐ別室からやってきた。


丸越「本主さん。ヤバいんじゃないですか?」


本主「何が?」


丸越「あの件ですよ。犯人匿って、逃がしちゃったやつ。」


本主「そう言えば、君は知らなかったんだね?」


丸越「え?」


本主「彼は犯人じゃないんだよ。すでに、僕は真犯人を捕まえ、警部が取り調べてる最中さ。その進展は、極秘で行われている。そして、じきに裁判が始まって、公に知らされる手筈だ。そうなれば、あの恐喝野郎も地団駄踏んで、悔しがるだけさ。」


丸越「それじゃ・・・」


本主「むしろ標的にされた彼の身の安全を図り、ほとぼり冷めるまで逃避行させているだけの話だ。」


丸越「いつまで逃避行するんだ?」


本主「この場合、真犯人が自白するか、容疑を認めない限りは公にしない方が良いんだ。その間だけだよ。真犯人が証拠不充分で釈放されたら、こいつと共謀してる連中が指示を受けて、再び彼を狙うからな。とにかく、海松葉もその事実をまだ知らないんだ。とんだ"おめでたい"野郎だよ。」


丸越「つまり、逃避行中の彼は、奴らに陥れられて犯人に?海松葉の野郎は、勇み足ってわけか。」


本主「そうなんだよ。僕は、窮地に立つことはないがね。海松葉に目を付けられた以上、ハガキで現況を伝えてくるのは間違いだ。」


そこへ磐田が戻ってきた。


本主「そこで、磐田くんに彼宛の手紙を出してもらったんだ。海松葉という恐喝屋が目を付けてきたから、ハガキで現況を知らせるな!と。」


磐田「魔の山警察署内の郵便局から出しました。」


本主「ああ。ありがとう。あの警察署には、コンビニや郵便局、内科にカフェまで併設されている。実に、安全な場所だよ。」


丸越「でも、警察関係者にさえ、海松葉に弱みを握られてる奴がいるんじゃ?」


本主「少なくとも、響風警部は頼りになるだろう?」


磐田「まさか、海松葉が事務所に乗り込んでくるなんて。」


本主「1つだけ感謝してるよ。お陰様で、彼女の残像は打ち砕かれ、のぼせた僕の頭を冷やしてくれた。僕と愛輪とは、あくまでも探偵とクライアントだ。それ以上でもなければ、それ以下でもない。そういうけじめを取り戻せたからね。この事件が解決するまでの話だが。」


丸越「なんで、奴は事務所まで、乗り込んで来やがったんだ?」


本主「ま、自白するようなもの!ってやつさ。」


磐田「え?自白?」


本主「かえって、僕は確信が強まったよ。だが、事実を検証せねばなるまい。丸越くん。一緒に魔の山警察へ。」


丸越「は?何しに?」


本主「事実の検証をしに。」


─つづく─