9月になり

新しい絵本を沢山迎えています。
その中から
まずこの一冊をご紹介させてください。

極上の
イタリアのむかし話。



昨年あたりから
童話、昔話に心惹かれてなりません。

とても励まされ
抱きとめられるのです。

同じ作家さんが続いているのですが
ご紹介せずにはいられない物語。
ご理解くださいませ。




表紙の絵を見ているだけで心安らぎます。

ブルーの服は
寂しさの象徴であるとのこと

主人公のペリーナも きっと。



むかしむかし
で始まる物語は
身勝手な親、大人
から始まるものが特に海外は多いですね。

不条理から始まる
不条理にも何かを失い

何かを得る

というところは
映画の定義と同様です。



主人公ベリーナの父親は
梨の木を育てていて
毎年籠四つ分の梨を
王様に納めなければなりません。

ある年
籠三つ半の梨しか収穫できなくて

娘を籠に入れて
上から葉っぱをかぶせて
納めるのです。


昔話は
どれも少し怖いです。

子どもの時と同じように
やはり今も苦しさをおぼえます。

本来は子どものための物語ではないものが
多いのです。
大人の物語。

この絵本の原題は
「梨と一緒に売られた女の子」です。



王様の倉で見つかったベリーナは
そのままお城で働きます。


ベリーナは働き者で優しいので
同じくらいの歳の王子と仲良くなります。

親に捨てられ
生きるため
居場所を失わないために
懸命に働いて

やっと
小さな悦びを見つけたのに

その仲良しさや楽しそうな様子を妬まれます。


「魔女の宝ものをとってこれると自慢している」
と噂を流され

王様に
「いちど 口にした言葉は まもらねばならぬ」
王様に宮殿を追われます。



歩き疲れたペリーナ
梨の木に登って眠る挿絵が
見開きページいっぱいに描かれています。

文字はありません。
挿絵のみ。
月明かりに照らされ
ぐっすり眠るペリーナと満月が
息をのむ美しさんです。



毎年9月は
お月様絵本を読むのが楽しみで

今年は
このイタリアのお月様が
とても気持ちに合います。


バックの色が
闇色ではなく
このブルーなので
絵本でありながら
月明かり
と感じられるのです。
美しい。
優しい。

このブルーです。

この後眠りにつくのでしょう。



朝になると
お決まりの魔法使いのおばあさんがいて

肉のあぶら と
パン と
もろこしの穂

それから
おまじないを教えてもらいます。


心優しく賢いペリーナは
与えられたものや
おまじないを的確に使い
進んでいきます。


酒井駒子展で
この絵本を壁に展示された原画で
読み進み
度肝を抜かれたのは
最初の難所

やがて かまどのある場所にいきあたりました。
3人の女が かみの毛をむしっては
そのかみの毛で かまどをはいていました。


絵の凄みと
かみの毛をむしる女達の存在、

どの子も
大人も
心も目も
立ち止まります。


その後の
襲いかかる犬や
血のような川
少し開くと、すぐに閉じてしまう門の扉‥。

グロテスクで
こわい一つひとつの場面を
知恵と勇気でくぐり抜けていくスピード感を
髪やスカートの動きから感じられます。



最近
利己的ではなく
利他的であることの意味を学ぶ機会が
続いています。

自己犠牲
ではなく
人のしあわせ
気持ちを考えられる 
ことの意味。


それを
すっと受け取れる物語です。

幼い王子も
突然奪われたペリーナとの時間を
取り戻し
育むために知恵を働かせるところも好きです。

利己主義の不条理さに屈することなく
深く傷ついているはずなのに
利他的で在れ
思いやり深く
乗り越えていく生き方を見せてもらえます。


私一人の読みは
この程度なのですが

後書きに心射抜かれました。

酒井駒子さんの

「父親や王様から理不尽な扱いを受けながらも
 かまど女や
 飢えた犬など

 出会ったものたちの苦しみを解放してあげる
 ストーリーに心惹かれた」

という言葉が深く響いて
この物語が
もっと大切な物語となりました。

多くの不条理、理不尽をしるペリーナは
他者の苦しみが、わかるのでしょう。

解放されたもの達も
その悦びを大切に思い
ペリーナを救うところが
たまらなく好きで台詞も胸がすきます。

救って
救われる
というエネルギーの循環あふれる物語を
お月様が満ちてくる
今の季節にお届けしたいと思いました。


私はこんなに凛々しくなれなくて
嘆きがちだけど
こうありたい
と思える主人公との出会いは
光となります。

自分のために読むのも
愛おしい人を想って読むのも
小さな人達とも読むのにも
とてもいい物語です。

声に出して読むと
一層表情を増し
その人
の物語となるでしょう。


物語のなかには
生きていくための糧となる教えが
込められています。

生きていくのは苦しみを伴うものだから
先人達が
物語を語り聴かせるのだと思うのです。










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