第4回東日本大震災チャリティマッチが開催!! | 欧州野球狂の詩

欧州野球狂の詩

日本生まれイギリス育ちの野球マニアが、第2の故郷ヨーロッパの野球や自分の好きな音楽などについて、ざっくばらんな口調で熱く語ります♪

 昨日、職場の休みを利用して船橋市民球場に朝から足を運んできました。今年で第4回目を迎えることとなった、All Nationsによる恒例の「東日本大震災復興支援チャリティマッチ」を観戦するためです。


 俺がこのイベントに参加するのは、今年で3年ぶり2回目。元々は「野球狂の会」という名称で、日本はもちろん世界中でプレーする野球選手たちによるチャリティ活動としてスタートしたものですが、今年から名前をAll Nationsに改めて心機一転という趣となりました。初めてのイベントは河川敷での紅白戦形式で開催。その後第2回は大阪・豊中ローズ球場、第3回は八千代総合運動公園野球場で行われ、そして今年は船橋を舞台に実施されることとなりました。


 この日の対戦相手として選ばれたのは、東京に本拠地を置くクラブチーム「東京メッツ」。元千葉ロッテマリーンズ二軍監督のハイディ古賀こと古賀英彦氏が監督を務め、かつてはWBC2013タイ代表のネイサン・ロレンツも所属していたチームです。俺が球場に着いたのは、開場時間ぎりぎりの朝9時30分頃でしたが、その頃には三塁側スタンドに早くもメッツ応援団の横断幕が張られていました(メッツは元々ロッテの応援団として活動していた人々が設立したチームで、クラブチームでは珍しくプロ顔負けの本格的な応援が行われます)。


 試合前には、かつては関西独立リーグに参加していた紀州レンジャーズや、来年からBCリーグに加入する武蔵ヒートベアーズの応援団と合流(レンジャーズの応援団員の方とはツイッターでずっと交流があったのですが、今回初めて直接お会いすることができました)。奇しくも一緒に参加したベースボールブリッジのメンバーが、彼らと一緒に応援することになっていたため、俺もそこに飛び入りで加わらせてもらうことになりました。公式戦ですらないこの試合のためだけにわざわざ関西から遠征し、ラッパや太鼓といった鳴物もばっちり準備。選手はもちろんのこと、このイベントに支える側として参加する人々の熱意を感じる一幕でした。


 今回の会場となった船橋市民球場は、7500人を収容でき高校野球でも使用される本格的な野球場。この日の試合ではグラウンドやスタンドはもちろん、バックスクリーンの電光掲示板もフル活用されたほか、球場内のPAシステムを使った場内アナウンスもばっちり行われました。アナウンスを担当したのは、過去に独立リーグやフットサル等でスタジアムDJを担当されてきたというDJハッシーさん。各打者の打席前には、1人ずつ専用の出囃子もばっちり流れます。さらに、試合中はスタンドから両軍の選手に対する鳴物応援が行われ、雰囲気はプロ野球の試合さながら。失礼ながら、はたから見ればパッと見草野球にしか見えなかったであろう第1回と比べると、わずか数年しか経っていないのに隔世の感がありました(笑)


 試合の前にはAll Nationsの三好貴士監督と、メッツの部長を務められているお笑いコンビ・トータルテンボスの藤田憲右さんによる挨拶が行われた後、地元船橋を拠点に活動する和太鼓サークル「子供和太鼓高野太鼓」によるパフォーマンスが行われました。旧野球狂の会の発起人として、自分たち野球選手に何ができるのかを考え続けてきたという三好監督、震災後に現地で炊き出しなどに参加し、被災者たちの思いを肌で感じてきたという藤田さん、そして「復興太鼓」と銘打った力強いパフォーマンスを披露した高野太鼓の皆さん。いずれからも「復興はまだ終わっていない、これからも支援を続けていかなければいけないんだ」という強い思いを感じました。その後子供たちによるベースランニング対決を経て、いよいよプレーボールです。


 しかし昨日首都圏にいらっしゃった方ならご存知でしょうが、昨日はあいにくの悪天候。試合前のスタメン発表の時からぽつぽつと降り始めた雨は、プレーボール前から本降りに変わり試合進行を大きく妨げました。1回の表裏は何とかプレーできたものの、1回裏が終了した時点で早くもグラウンドは水が浮く状態に。両軍の選手たちが共同でグラウンド整備に奔走しますが、「予定通り最後まで試合が行えないのではないか」という悪い予感が訪れたファンの間で漂います。そして続く2回の表、ついに起きるべきではなかった悲劇が起きてしまいました。


 All Nations先発の大竹秀義投手(富山サンダーバーズなど)は雨のせいか制球に苦しみ、序盤から走者をためる展開に。2回には先頭打者に三塁打を打たれたのをきっかけに、無死満塁のピンチを迎えてしまいます。 それでも後続を打ち取って二死満塁までこぎつけ、打席にはメッツの二番打者・鶴谷。ここで大竹が何とか2ストライクまで追い込んだ後、三振を取りに行ったボールは雨で滑ったか、なんと打者・鶴谷の頭を直撃してしまいます。グラウンドに倒れこんだ鶴谷は起き上がることができず、担架で退場しそのまま病院に搬送。負傷退場者が出たことからこれ以上の試合続行は困難となり、試合は2回表途中で降雨ノーゲームという結末となってしまいました。


 もっとも天候が良くなかったことや、試合中に起きた不慮の事故ということもあって両軍応援団の間でも「こればかりは仕方ない」ということで合意。試合後には病院に搬送された選手の容体を心配しつつ、両軍のファンによる交流や選手による野球少年・少女による野球教室などが実施されました。また会場では近隣の飲食店によりミネストローネスープなどがふるまわれ、参加者たちの冷え切った体を温めるのに一役買っていました。俺もいただきましたがめちゃくちゃおいしかったです。


 俺たちベースボールブリッジのメンバーは、All Nationsの一番打者として出場した田久保賢植外野手(フェルトキルヒ・カージナルス/オーストリア)や、今年のU18アジア選手権でフィリピン代表監督を務めた高橋将人外野手(Philab/フィリピン)、フランスでプレーした中川勇人内野手(シャトーレ・フレンチカブス)にもご挨拶。田久保さんは第1回の時にも参加した俺のことを覚えてくださっており、オーストリアと日本を野球で結びつけるために色々と動いていることなどについて話してくれました。高橋くんとはTwitterではフォロワー同士だったのですが、実際に会うのは今回が初めて。日本とフィリピンのハーフということで、2017年WBCでは山崎康晃投手(横浜DeNA)ら他のフィリピン系日本人プレーヤーとともに、フィリピン代表の一員としてプレーする予定だそうです。


 今回のイベントは、試合自体は残念な結末となってしまいましたが、参加したメンバー全員が野球というスポーツを通じて東日本大震災に対する思いを1つにしたという意味では、非常に意義がある場だったのではないかと思います。メッツ応援団の皆さんからは試合後「来年もまたやりましょう」という温かい言葉をいただきました。別に俺自身はスタンドで太鼓を叩いていただけで、別にイベントの中の人でもなんでもないんですが、それでも何か胸に来るものを感じましたね。試合前のスピーチでもありましたが、このイベントが第5回、第6回と続いていくことで、少しでも支援の輪が広がっていくことを願っています。


 また末尾にはなりますが、頭部死球により負傷退場された東京メッツ・鶴谷選手の無事を心からお祈りしております。命に別状なく、またグラウンドに選手として戻ってこられますように。