「陽菜!何食べるー!!」

「うるさいなぁ
選ぶから待ってよ」

「ほーいっ」

レストランの目の前で
嬉しそうに笑う優の姿
大抵の男は余裕を見せようともっと
大人な笑顔で見てたのに
この人は幸せ!って顔してる

「ねぇ…なんでそんなに素直なの?」

「へ?なにが?」

「陽菜への気持ち
もっと気どったりしないの?」

「んー、、
俺、嬉しいからさ
隠したくもないし、そのままの俺のこと
見て欲しいから」

「ふーん変なの
今までの男の人たちは
もーっと冷静だったよ」

「すごいな!その人達
こんな美女目の前にして
俺もそのくらい大人になりたい」

「…だめだこりゃ」


帰り道
タクシーを止めてくると
店の前で待たされる
今までの人なら最初から連絡して
ってかそもそも自分の車で送ってくれた
お持ち帰りメインやけど
でもこの人はそんな素振りなくて
ほんとに届けようとしてる

「調子狂う…」

(お姉さん可愛いなぁー)
(ちょっと、飲みに行こうや)

「え、あっ…ちょっと」

現れたのは明らかに出来上がった
おじさん達
めんどくさいから振り払うけど
どんどん近づいてくる
…ほんと最悪

「おいっ!なにしてんねん!」

「あ…」

彼は遠くから走ってきて
私のところまで来て
私を抱えて引き離した

「ちょっと!何勝手に…」

「勝手に触るな!!」

(なんや兄ちゃん威勢がええなぁ)
(そんなちっちゃい身体で
あー弟かー?)

「違うわっ!…ウッ!!」

「ちょっと!!アンタ達なにをっ…」

「陽菜っ、いいから」

「は?」

「おっちゃん達酔ってんやろ?
早く帰れって
大事になったら目が覚めた時困るやろ
ほら、行けって
これ以上このこの前おるなら…許さんぞ」

その時の目は
いつものヘラヘラしてる顔じゃなくて
陽菜も鳥肌が立つほど怖かった

(わ、わりぃな)
(ちょっと飲みすぎた…)

おじさん達はバツが悪そうに去っていった

「…ふぅ
陽菜…大丈夫!?怪我は
変なことされてない!?」

「…大丈夫
そもそもあんたが離れるから…」

「っ…そうやんなごめん」

「…ねぇ、血が」

彼の唇の端は切れていて血が流れている
それに手を伸ばそうとすると
払われた

「大丈夫…ほんとにごめん
タクシーこっち」

「…」

「今日はありがとう
嫌な思いさせてごめん
じゃあね」

「ねぇ、ちょっと…」

彼は悲しそうに笑って
扉を閉めタクシーは発車した
窓から振り返ると
寂しそうな背中が見えた



(てか陽菜ありがとうって言ったの?)

「…言ってない」

(はぁ…なにしてんの
彼は大事にならないように
殴られてもなにもしなかったんでしょ)

「そうだけど…」

(それに…今日YUさんも撮影みたいで
でも延期になったらしいよ
監督激怒だって)

「え?」

(昨日酔いつぶれて顔を怪我しました
なんて朝から謝ったらしくて
1時間くらい監督怒ってたって)

「なんで、、言えばいいのに」

(陽菜に迷惑かかるもんね
うちの事務所にも本人から
昨日のことへの謝罪の電話きてたよー
社長はYUさんのファンだから
全然OKだったけど)

「ねぇ、どこにいるの?あの人」

(多分隣のスタジオじゃない?)

「…」


気になって隣のスタジオへ行く
すると彼の姿があった
いつもみたいに笑ってる
何だ変わりないじゃん
マネージャーの話聞いてたら
もっと変わったのかと…

「お疲れ様でーす」

(え!こじはるー!)
(どしたのどしたのー!)

「私も隣で撮影で
知ってるスタッフさんだから
挨拶しようと思って」

(えー!!)
(優しいねぇ)

営業スマイルで返し横目で
彼のことを見ると
彼は下を向いてた
いつもみたいに姫!って叫ぶことも
デートに誘うこともなかった

「お疲れ様ですYUさん」

「…お疲れ様です小嶋さん」

「っ…」

「へへっ、俺トイレ行ってきますね」

違う…いつもの彼はきっと
私が名前を呼んだら嬉しそうに
子犬みたいな笑顔で私を見つめるのに
なんでそんな悲しそうな顔してるの…?




「ねぇ、待って」

「…どしたの?」

「どしたのじゃなくて
なんで無視するのよ」

「無視してないじゃん
ちゃんと挨拶したし」

「じゃなくて…いつもみたいに」

「…」

「ねぇ」

「君の言う通りだった」

「え?」

「君に俺は相応しくない

君にはもっと大人でスマートな人
いつも言ってる人
そういう人が似合うんや」

「何よ突然」

「守ってあげられなかった
怖い思いをさせてしまった」

「大袈裟…別に怪我もしてないし
それなら貴方の方が」

「俺!…浮かれてたんだほんとに
やっとデートできるって
楽しくて楽しくて幸せで
浮かれて、君をあぶない目に
もし!俺がもっと行くのが遅かったら
そう考えると…俺ほんと自分が憎くて」

「別に陽菜そんなことしてくれなくても」

「これからいても
俺は浮かれてまた傷つけるかもしれない
そんなやつ
君の隣にいる資格ないから」

「ねぇほんとに自分勝手」

「ごめんね
もう振り回さないから」

「なにそれ…」

「これで最後
ありがとう陽菜
幸せになってね」

「ねぇ、ちょっと」

こうして私の前から彼はいなくなった