「…帰るか」

これ以上見てられない
俺が来たところで
何もならないだろ

「じゃあね、先生」

その時だった

「だ、れ」

「ッ!?…」

彩の目が開いた
黒目を動かし当たりを確認する

「め、目が覚めた…?
さやっ…」

手を伸ばそうとした
彩をこうしたのは俺
触れる資格なんてないだろ
俺なんかに

「先生呼んでくるから」

岸野にも電話して
俺は病院をあとにした

「よかった、彩の意識が戻った
よかった…」

空を見上げる
神様、仏様ありがとう
欲張らせてください
次はどうか彩を幸せに
僕はどうなってもいいから
彼女に笑顔が戻りますように
1人になりませんように

「感傷に浸ってんの?」

「…岸野」

「彩、脳に異常ないって
記憶も残ってる
混乱はしてるけど大丈夫そう
リハビリ頑張らなあかんみたいやけど」

「そっかよかった」

「行かんでええの」

「行ってどうすんの?」

「そばにいてあげな?
彩、両親に見離されてるし
1人やで」

「岸野がおる」

「いて欲しいのは…あんたやで」

「もう、自由にしてやりたい」

「渡辺くん」

「俺さ、もう迎えに行くなんて
かっこいいこと
言えないからさ、だっせぇのホンマに」

「…」

「彩にとって俺は悪でしかないから
ずーっと奪ってばかりや
返すことはできひんけど
これ以上奪うことは…」

「それは、ちゃうっ!」

「…っ、、」

「彩!?何してんの!!
ベッドで安静やろ!!」

「もう、会えないと思ったから…ハァハァ」

「彩っ…渡辺くん彩を病室に戻して!」

「…」



「はい、頭気をつけて…よし
これで大丈夫です」

「…優紀」

「休んでください先生
俺、帰ります」

「なんでっ、笑ってくれないの」

「…」

「私、どうしていいか分からなかった
会えない時間が増えて寂しさと同時に
優紀が無理してるのを見れなかった
逃げちゃった…
そしたら優紀は楽になると思ったから
それやのに…私
優紀のこと苦しめてる」

「先生、もう大丈夫
早く元気になって?
そしたら笑えるよ俺
もう心配しないで
昔と違う大人になったから」

「…そう、やんな」

「じゃあね」

「また、来てくれる??」

「…何言ってるんですか
俺はただの教え子ですよ」

「優紀」

「これでいいんや、、、
すぅ、じゃあね!先生っ
お大事に」

「ッ!!」

走って外に出る
これでいいんだ
ちゃんと別れられたから
俺笑えてた?
安心させた?
少しは大人になったところ見せれた?

「ホンマに、さよなら
俺の、一番好きな人」






(王子ーっ)
(かっこいいー!!)

「ありがと皆」

大学の帰り女の子に囲まれる
きっと可愛いんだろうな
周りの男子も羨むから
でも何とも思わない
俺にとって可愛いのも愛したいのも
1人だけだから

プップッー!!
「渡辺くぅぅんー」

「…岸野」


「車なんて珍しいやん」

「んードライブしてたらね人生終わった
みたいな顔で歩いてるイケメン見つけたから」

「…」

「彩、実家に帰るって」

「そ」

「無理やりお見合いさせられるんちゃう?」

「そりゃ大変やな」

「ホンマにそれだけ?」

「なにが…」

「迎えに行ったらいいのに」

「だから」

「意地っ張りやな
ほんまは会いたいくせに」

「…」

「まぁでも結婚しちゃったら
もうほんまに無理やな」

「そーやな
俺も彼女作ろかなー」

「無理やわ今の渡辺は
女の子泣かすでしかないわ」

「…そうやろな」

「渡辺もう一度…」

「送ってくれんのやろ?
着いたら起こして」

「…わかった」