「…疲れた」

朝から
撮影、取材、ライブ、取材、撮影
ありがたいことに
日本に帰ってきてからも仕事は
ひっきりなしにやってくる

「早く帰りたい、、」

「仕事中なんやけど?」

「あーへいへい」

「へいへいやと
誰に育ててもらったんよ」

「山田」

「あーやだやだ
昔は菜々ちゃんって可愛かったのに」

「どーもすみませんねぇ」

山田に憎まれ口叩くのも
仕方ないと思う
まともに家に帰れてない
会いたい人に会えてないんや

「あ、みるきーグラビア出してんなっ」

「あーまた触れたらあかんとこを」

「分かってて言いましたー
でも凄いよなー
もう40やのにあの体って」

「努力してるからなー」

「で、彩はその努力した体を
独り占めしてると」

「っ…」

「え、、もしかして」

「うるさい…」

「えぇぇ!?ホンマに!?
なぁなぁホンマに!?」

「撮影戻る!」


日本に戻って半年
そりゃ恋人らしい雰囲気にはなったりするけど
ちょっと1歩下がる自分がいて
それは彼女も一緒やった

「仕事早くおわらせよ」



予定より早く終わって
急いで家に帰る

「ただいま」

「あー彩おかえり
早かったなー」

「うん巻いてきた」

「えー周りに迷惑かけたらあかんでー?
待ってなご飯温め直す」

「うん」

私は最近気づいたことが沢山ある
美優紀が私と同じ年のときに
私は小学生で
そんな私を1人にしないように
美優紀は仕事を必死にこなしてた
子供ながら分かってたつもりやけど
今になってよく分かる

昔、ご飯は何かと
美優紀の後ろを飛び回ってた時は
大きく見えた美優紀の背中は
今じゃわたしより小さい

「美優紀っ」

ギューッ

「え?彩どーしたん?」

「んーん…」

「…どーした?
仕事でなんかあった?
嫌なこと言われた?」

すぐに向きを変えて
抱き締め直してくれる
頭を撫でて優しい声で
昔から変わらない
直ぐに不安になる私を
面倒くさがらずに側にいて
泣いて起きた日には
散歩がしたかったと笑って
外に連れ出してくれた

「美優紀の大切さに
改めて気づいた」

「なにそれー
忘れてたん?」

「ちゃうよ
日に日に思うんや
美優紀がおらな私は」

「んー、、
私なずっとなんで自分がいるのか
分からなかった
親の言う通りの人生を歩めなくて
期待されなくて必要とされなくて
私を好きだという人を
受け入れることもできなかった
毎日つまらなかった
きっとこのまま死んでも
悲しくなんかなくて
何も残らないんだなってしか思わなかった
そんな時に
目の前に現れたのは彩

彩と出会ってから
全部変わった
彩が必要やった
だから守るためならなんでも出来た
私にとって彩はそんな存在」

「みゆちゃ…」

「懐かしいねその呼び方
舌っ足らずやった彩がねぇ」

「ん…」

優しく撫でる美優紀の手が
気持ちよくて抱きしめる力を強める
もう失いたくない…

「ごめんねぇ…彩っ」

「え…?」

「あのとき…手を離して」

「…」

あのときとは
ママとのことや
あの時の記憶は正直あまりない
ただ物置の中で白くなる景色を受け入れ
星になれると思ってた
そんなことだけ
音遠の声がして優さんの温もりを感じて
気がついたら
恵くんの腕の中にいて
みゆちゃが遠くで優さんを掴みながら
泣いていて
何度も私の名前を呼んでくれたこと

「そのせいで、彩は
あんまり食べられへんし
怪我も増えて…」

「その分私は幸せやで」

「え」

「食べられへんからって
沢山あーんしてくれたし
美優紀の特製プリン食べれたし
傷の痕を見る度に辛くなるけど
それと同時に美優紀への愛が溢れる
だからよかった」

「…彩
もぉーあほぉ…」

「泣いてんのー?」

「うるさいなぁ」

「えー見せて」

「いやや」

「ええやんか」

「おばさんをからかうものじゃ
ありません」

「…美優紀」

「なに」

「美優紀はいくつになっても
綺麗やで」

「っ///」

あ、久しぶりに見た
女の美優紀
ずっとお母さんの美優紀だから
胸がキューッって締め付けられて
体が熱くなる

「美優紀っ」

「なに…ンッ///」

「可愛い…」

「バカ、何言うてんの…」

「本気や」

「あ、あー
ご飯、ご飯食べよ」

また、離れられた
もっと恋人らしいことしたいのに
美優紀は離れてしまう
でも今日は…

「美優紀…」

後ろから抱きしめ
耳元で低い声で囁く
すると耳が真っ赤になる

「や、めてその声///」

「こーでもしないと逃げるやん」

「逃げるって…」

「美優紀はしたくない??」

「っ…そういうわけちゃうけど
ほら、私もう40やし…」

「年齢なんて関係ない…」

「でも」

「…」

これ以上の勇気が自分になかなかでない
あ、そうだ

冷蔵庫を開け
前に優さんがくれたアメリカのお酒を
一気に飲む

「え、ちょっと彩っ!」

「いける…よし

美優紀…行くよ」

「えっちょっと!!」






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