こんな時間にブログアップってどうなの(--;)
目が覚めちったのでまとめちゃいました。

今月半ばに新作が出ますよね。待ちわびた久々の新作なれど、そこに私の強く求めるものはない…orz  いや、何事も順番ですよね。はい。
ということで独り遊びをしはじめました。SSです。私のSSは承凪です。ご興味のある方お付き合いいただければ嬉しいです。
えっと、一応話が繋がってますが…前回の『torch』からの続きだなと思いながら読まれると肩透かしになるかも…
いや、まあ、ね (・Θ・;)
よろしければ。承凪SSです。




( ・(ェ)・)


SKIPPED BEAT


綿菓子の甘い匂いって温い匂いがするやろ。あんな感じや。体温がな甘くかおるんや。あいつの首んとこ、耳の下あたりとかにかぶりつくとな、むせるくらい濃厚に迫ってくるんや。あれたまらんで。つい夢中になってまうから気を付けなあかんのや。あいつ白いからな、すぐ跡がつくやろ。さすがに悪いと思うんやけど気が付いたらやってまう。気を付けなあかんのや。




じつはおれの方が先に気付いとった。
あいつがまだ道路向こうの歩道を歩いとるところから気付いとった。マフラーを鼻まで巻いて、両手をポケットに突っ込んで、跳ねるみたいな弾むみたいな独特の歩き方。すぐにわかった。

その日おれは姉の買いもんに付き合わされていた。朝方まで降った雪が珍しく積もって、雪に不慣れなこの街の、あれやこれやに障害を起こした日やった。その日はおれの店にも障害が起きた。いつもなら昼過ぎに軽トラで配達に来る野菜の仕入れが来れんようになった。ついでにバイトも来れんやつが出た。 どうしたもんかと頭抱えとったら義兄から電話がきた。こんな日に買い物に出掛けると訊かないから、もし都合がつくなら付き添ってやってくれないかと。もちろん姉ちゃんの話や。この電話でその日のいろいろに踏ん切りがついた。今日のおれの午後からの予定は、はねっかいりのお守りと決まった。ええ歳して姉弟で買いもんもないけど、腹ん中に赤ん坊抱えた身体でこんな日に出掛けるって言い張るのには、おれにも心当たりがある。親父にまた何か贈るんやろう。毎年2月14日に贈っとるから。まあ義兄にもな。ちなみにおれにはない。おれが中学くらいの頃からない。おれが生意気やからなんやと。

姉ちゃんとこの最寄り駅から電車で移動して、ずっと俺は荷物持ち。ちょいちょい休憩入れて遅い昼飯も食わせてもらった。飯も食ったのにケーキなんて頼みはじめたから、おれもビールを一杯だけ頼んだ。ジョッキやけど。どうでもいい世間話とちょっと老いてきた親の話、こうなると話の方向が面倒臭い方を向いてくる。ほらな、彼女はいるのかと余計なことや。まあ、ぼちぼちと濁しながら、おれの鼻先にふいに漂った甘い匂い。いつからかそんな話になると、思い浮かべるのはずっと同じ面影や。こらあかん。こらまずいわ。さすがに青くなって足掻いた事もあった。それこそ手当たり次第に女を側においてみたり。
そこでおれは自嘲のため息を密かにもらす。柔らかい温もりをそっと掴みながら、手のひらにあたる男より大きめの粒を感じれば、これだこれだと頭も身体も悦びだすのに、うなじに唇を寄せると「あ、これちゃうわ」と途端に違和感ばかりが鼻につきだす。まあ、それでも最後までこなせるんやから男はなんとも悲しい生き物や。
ふっと笑うと、なんやの気持ち悪いとケーキを食いながら文句を言われる。
「ケーキはやっぱはじっこから切って食うよなあ」
おれが言うと、ほかにどうやって食べ始めろって言うんやと姉ちゃんが言う。まったくその通りや。特に三角に切り分けたケーキは、フォークで食っても掴んで食ってもまず普通は尖ったとこから食い始めるもんや。けどな、まん中ほじって食べ始めるやつをおれはひとりだけ知ってる。はじめて見たときはまじまじと見入ってしまった。汚ないと叱るより先に、食いにくいやろと聞いてしまった。あいつは顔もあげずに「そうやねん」と答えながらまだほじる。ぐちゃぐちゃになり始めたそのケーキにおれが自分のフォークを入れてはじっこをすくい取ると、あいつは「ああ~」と情けない声を出してやっと顔をあげた。「切り分けて食えばええやろ」と食べてみせると「わかってるけど、こっからいきたくなんねん」と不満げに口を尖らせた。そんな顔が浮かんでしまうんや。おれもそうとうヤバイな。
「おれは結婚でけへんかもしれんなぁ」
つい口に出したおれを姉ちゃんがじっと見上げる。人妻はあかんよととんちんかんな事を言いだした。そんなんちゃうよと言いながら泡が消えかけたビールを飲みほす。人妻か、自分ひとりのもんに出来んとこなんかは人妻みたいなもんか。そう思いながらもつい笑ってしまう。ケーキをほじって食べる人妻なんかそう居んわな。空になったジョッキを握って姉ちゃんを見ると、もうあかんあかんとセットの紅茶を飲みほした。荷物持ちの再開のようや。

結局自分のもんも見て回って、待ち焦がれた義兄からのメールが来たのが5時半頃か、解放の時間が近付いてきた。ほんならゆっくり駅前に出るかと歩いていたら、反対側の歩道に目が行った。雪を避けながらいつもより小幅で歩いているもんだから、歩き方がいつも以上に特徴的になってる。おれは自分の口角が自然と上がっていくのを感じた。駅前のロータリーまで出るとあいつも来てる。改札に入ってしまう前に電話かけたろうかなと思ったら姉ちゃんに肘をつかまれた。ちょっと歩き方が速すぎたみたいや。仕方ない。今日はタイミングが悪いんかな。
姉ちゃんに合わせてゆっくり歩いていると何だか視線を感じた。振り返ってみたらあいつがおった。この時おれがどんだけ嬉しかったかわからんやろうな。わからせる気もないけどな。癪やから。
「おう、偶然やな。仕事帰りか」
何でもない顔で声かけた。
「なんやお前、こんな日に買いもんか?」
歩み寄りながら応えるこいつの顔が何だかおかしい。能面みたいな顔で笑っとる。ふと、喋りながらこいつの視線がちらちらとおれの腕に移るのに気付いた。なるほど。おれの腕には姉ちゃんの手が掛かっとる。こいつ誤解しとるんや。おれの機嫌は更に上がる。お前にはずいぶん泣かされとるからな、たまには逆襲すんのもええやろ。
出たなかったと迷惑気にぼやいてみせたおれを、姉ちゃんがぺちっと後ろから叩いてきた。そのまま少し姉ちゃんと掛け合いをしてみせる。いつもやきもきさせられとんのはおれの方や、たまにはええやろ。
そう思ってうかがい見ると、こいつはすっかり俯いてちっこくなってまってた。あかん、やり過ぎた。少しかわいそうに思いだしたら、ええタイミングで義兄の迎えがきた。こいつに意地悪すんのも潮時のようや。
横付けしてきたセダンに荷物と姉ちゃんを乗せると「あんたも乗ってくか?」と姉ちゃんが言ってきた。本当なら送ってもらうとこやけど、おれが乗り込まずにドアを閉めたからそう聞いてきたんやろう。こいつん家まで乗っけてもらうのも悪くないが、その有難い申し出をおれは断った。
せっかく会えたんや、そろそろふたりになりたかった。

見送りながら、さっそく彼女やないんかと聞いてきた。
「彼女ちゃうわ」と答えながら、どうにもにやけがとまらへん。もう少し焦らしたろかなとも思ったが、さっきまでのこいつの顔を思うとさすがにな。
「あれはおれの姉ちゃんじゃ」
車を見送ってる横顔に明かしたると、みるみる目が見開いた。そしてすうっと頬に赤みが戻る。うっすら微笑むようにしながら「へえ」とつぶやく唇に目が離せなくなる。吸い付きてえなと思いながら代わりに煙草をくわえる。
こいつが頑なに拒んでいる限りはどうしようもない。でも離れる気なんかさらさらない。おまえやってそうやろう。
遅い昼飯のせいであれから何も口に入れてなかった。おかげでそろそろ小腹が空いてきた。煙草をくわえながら夕飯に誘うと、靴が濡れてるから帰りたいと言いよる。こいつは何でこんな日にスニーカーなんか履いとるんや。確かトレッキングシューズ持っとったやろ。せめてあっち履けばええのに。
いろいろ思いながら、いろいろ思いすぎておれは全部飲み込んだ。
「ほなら今日はおまえンちや。コンビニ寄っておでん買おうぜ」
「なに勝手に決めてんのや」
楽しくなってきておれらは並んで改札へ向かう。こいつも楽しそうや。このままおまえの家に行って楽しく呑もうや。お預けばかり喰らわされているんやから、これくらいの我が儘ええやろう?


ほんまにおまえと楽しく過ごしたかっただけなんや 。


今にも震え出しそうな手を必死で抑える。
信じられん、こいつの部屋で、おれの腕の中で、こいつがおれにしがみ付いている。撮影でもないのに。
おれは信じがたいこの状況に喜びにふるえていた。そして腕の中にあるものを離すまいとかたく抱きしめる。

おれの腕の中に今、凪沙がおる。

キスしてくれとすがり付いている。
凪沙、おれがどれだけ待ち焦がれていたか、おまえはわかってるのか? おれがどれだけ堪えてきていたか、おまえはわかってるのか? おれのこの渇きを癒せるのはおまえだけなんやで、凪沙。

凪沙の目から涙が流れた。おれにはその涙の意味がわからない。ただ悲しいだけの涙でないならいい。おれはその涙を唇でたどってみる。こいつの涙はすべておれが吸い付くしてしまいたかったから。
熱に浮かされたような凪沙の顔に幾つもキスを落とすと、凪沙がそっと唇を開いた。たまらなくなっておれはそこに吸い付いた。
追い込むように凪沙の口内を味わっていると、凪沙の頭が少し引きはじめる。逃がすものかと頭を抑えると、なおも凪沙を喰らい続ける。次第に凪沙の舌もこたえはじめ、おれの舌に絡ませてくる。
たまらん凪沙、もう我慢出来ひんわ。
おれは渾身の思いで自らを凪沙から引き離し、凪沙に訴える。
「あかん、とまらなくなる」
すると凪沙は無言のまま黒目がちな瞳を潤ませておれの首に絡みついてきた。
「凪沙、ええんか?」
囁くおれに絡みつく腕にぐっと力を入れて、喘ぐように凪沙がこたえる。
「ええも何も、おれももう止まらへんよ」
この時おれがどんなに狂喜したかおまえにはわからんやろうな。

「凪沙…」

おれは何よりも大切なその名を呼ぶ。
もう後戻り出来ないところまでふたり来ていた。




( ・(ェ)・)



………おい、何も進んどらんやんけってな今回のSS。わたし的にはちょっと挟んでおきたかったんですが要らないとこだったでしょうか。まあ、こちらのSSはこんなもんなんで(^_^;  地味にマイペースに遊ばして貰います。

さてさて。連休が明けたら新作告知きますかしら。せめてworksだけでも承凪欲しいなぁ…  ほら、あれ、みたいなぁ…(´・ω・`)
とりあえず私もキムナギ、承凪の過去作品の旅へと出とくしかないので、そうして夏までしのぎたいと思います。