2才年下の従兄弟、Aくんが亡くなってから、もう10年以上経ってしまった。


ある日突然、携帯に知らない番号から着信があった。Aくんからだった。


「おじちゃんとおばちゃんの墓参りに行きたい」と言う。唐突な話にちょっと驚いたが、気持ちが嬉しかったので、私も帰省して案内する事にした。


彼は6時間くらい車を運転して、家族5人で来てくれた。ずっと遠方に住んでいたし、そんな機会もなかったから、うちのお墓に来るのは初めてだった。


みんなでお線香を上げた後、彼はフツーの顔で「僕、癌なんよ。手術の前にお参りしたかった。おじちゃん達には世話になったからね」と言い出した。「もうなんも食べれんのよ」


(そういう事か‥)

何もかも腑に落ちた。お別れに来たんだね。


奥さんも子供達も穏やかな表情で従兄弟を見ている。(泣くなよ)と、私は自分に言い聞かせた。


ヤンチャで若い頃から散々ヤラかしてくれたけど、何故か憎めない子だった。別れ際に菓子折りと、「わざわざ来てくれてありがとう」と、一万円札をくれた。


約2ヶ月後にAくんは亡くなってしまった。


(Aくん、立派だったよ。尊敬するよ)と、私は空の上のイトコを褒めた。


もし余命を告げられたとして、私は彼のように静かに運命を受け入れられるだろうか。


どうしても想像出来なかった。


(私には息子一人しかいないのだから、ちゃんと気丈でいなくちゃなぁ)と、途方に暮れるような気持ちになるだけだった。