北海道で過ごした約3年間には楽しい思い出がいっぱいだ。
元気な小学生時代だったからか、大雪が降るのもその寒さや辛さより、風景が幻想的に変わる美しさのほうが強く印象に残っている。
住んでいた町を離れる日、クラスメートが4人くらい駅まで見送りに来てくれて、列車の窓越しに少しだけ話をすることが出来た。
「カワグチさんが泣いてたよ」と聞いたけど、どんな基準で見送りの子達が選ばれたんだろう。
出発の時刻が来て、私は女子達と握手をした。すると、一緒に学級委員をしていたイシイヒサオ君がニコニコしながら手を伸ばして来た。
でも私はなんか恥ずかしかったから、
「イヤだ」
と言うと、女子達がイシイ君の手を取って、
「握手してあげてー」
と言ったけど、私は頑としてしなかった。
発車のベルが鳴り、列車が動き始めた時、思いがけず突然涙が噴き出して、自分でビックリしてしまった。
手を振るホームのみんながどんどん遠ざかり、やがて見えなくなった。
大人になってから何度も思った。
イシイ君と握手しとけばよかったなぁ
って。
イシイ君、あの時はごめんね。
お別れしたホーム