89 手伝ってあげたのが切っ掛け | 身近な大人たちの疑惑

 

・・小田家・・

その後、上田は正装して向かっていた。連絡していた小田家は、付き添うように良美も搭乗している。


小田の覗き知る男とは・・そして母の不倫相手と思う小田とは、どんな男かと興味を示して良美は着いて来ていたのだ。

「私の存在は何て?言う」

「隣に引っ越したとでも・・」

「隣っても随分離れてるわ」

「・・やっぱ、元上司の娘かな?」

「というか、私はもう石川の娘って小田さんは知っているよ」

「あ、そうか」

「父親の一周忌の時に会ってるんだから、正直に石川泰造の娘です。先日は有難うございました、と言うよ」

「そうだな」と笑って余裕をみせた。

そんな話をしていたら、ナビのお姉さんが「お疲れさまでした。目的付近に到着しました」すると目の前が「小田」の表札だったので路上に停めようとしたら、小田が待ってたように出てくる。

ガラガラと蛇腹の扉を開けると「オーライ オーライ」誘導してくれたので、仕方なく庭に駐車した。それで早く帰る言い訳にならなくなった。


最初に言葉を掛けたのは小田で「今日は婆さんが居なくて・・」何も出来ないと言うのだろうが、でもその方が気楽だった。

「どちらかにお出掛けですか?」

「絵画教室の手伝いでね」

「絵画?手芸教室は辞めたんですか?」と、良美は挨拶もしないで言う。

「歳だからね」

「あ、すいません。先日の一周忌には、有難うございました」気が付いたように礼を言う。

「いいえ、それより二人は?どういう関係?」とやはり怪しい見られたのか?

「引っ越し先が隣なんですよ」それは本当だった。

上田も言い訳のように「通りかかったら、あまりにも庭が草ボウボウで、手伝ってあげたのが切っ掛けです。そしたら石川課長の別荘だったんですよ」

小田が「あそこは、わが社の開発途中の場所だったからな。それで石川君にも土地購入を勧めていた」と懐かしがった。

それより上田は、早く久美との離婚を伝えたかった。