翌日「おはようございます」いつものように作業を始める草刈が「これです」と真っ先に、色褪せた折り鶴を持ってきていた。
主の山岸は朝になっても帰らないので、応接間の飾られている折った鶴と見合わせていた。
やはり、同一人物が折った鶴に間違い無いようだ。その証拠に嘴の部分が、普通より小さく几帳面に折られている。ただ山岸のは不動産の広告紙で折ってあったが、草刈のは正規の折り紙で折られている。
草刈は「紙が違うからに偶然だろう?」と惚けた。息子としたら偶然としか言えないのだろう。
「あ、そうかもね」圭子もこれ以上の追求はやめた。
「山岸さんが夕方帰ると連絡あったので、打ち上げで飲みに行きましょう」帰るのを待って、草刈と時間差で居酒屋で会うことにした。
そんな圭子の行動は、元旦那と別れてから秘密を持つ女になってしまったようで夜に草刈に合流。さっき会っていたので改めて挨拶もなく「私もお酒貰おうかしら」
仕事中の作業着も男っぽかったけど、普段着も格好よく着こなしている。そんな草刈が何故、結婚しないのか理解出来ないでいた。
飲む程に「私はバツイチは知ってるよね、でもあなたは、なんで結婚しないの?」
「あー、それ聞きますか、んー?俺は好きな人 イコール憧れの人」
「意味分かんないけど・・」
「だから、憧れの人とは結婚は出来ないでしょ」
「わからん、あんたの話は」と男っぽくなる。
「憧れている人とセックスは出来ない」
「はぁ? セックスしない、ふぅーん、それじゃ好きでもない人と結婚するしかないわね」と突っぱねる。
「だから結論言えば、俺は結婚出来ないんだよ。俺は憧れだけで生きて行ける変わりもん」
「自分のこと、客観的に分かってるのね。でも憧れて結婚出来たら、人生楽しいと思うけどね」
「そうかな?一緒にいて疲れない?」
「随分純情ね、もしも・・私が迫ったら受け入れる?」
「憧れてないから・・遊ぶかな」
「失礼ね」と笑うと口元が緩んだ。