(42) それは素晴らしい運命だね | 大人たちの過ぎゆく日々

大人たちの過ぎゆく日々

身近な家庭菜園/現代小説

(42)そして迎えた土曜日、野球部OBの集まりが三時から始まろうとしていた。涼子も早めに弘美と共に店にいた。 


忙しそうに動き回る中、予定時間より前に何人かの野球部員が集まってくる。一年後輩の長田くんも「いつまでも後輩扱いですよ」と、誰にとは言わず愚痴るが楽しそうだ。学年が一つ下なので涼子のことはよく知らない。今では会社の幹部らしいが、いつも補欠でボール拾いだったと記憶している。


監督も遅れて来てくれた。新井先生が一緒に居ないのは喧嘩でもしたのかと思ってしまう「ほう、懐かしい、我が校の制服だね」


さきほど店の奥で制服に穿き替えていた涼子を見つけて近寄ってきたのである。涼子も制服には抵抗も無く同窓会には必要なアイテムと思い履き替えていたのだ「お久しぶりです。安川監督ですよね」

 

「君は当時の生徒さんかい?一瞬、現役の生徒が来てるのかと勘違いしたよ」

 

大きな声で笑うと「当時の同窓の旧姓鈴木です」

 

周りの部員たちも「我らの野球部のアイドル 鈴木さんですよ」と分かっていたらしく、初めて言葉にして感激していた。

 

「ああ!噂の鈴木さんか!渡辺が好きだと言った人かな?でも当時は鈴木って何人か居たから、違ったら申し訳ない」

 

鈴木と言う姓は、確かに何人か居たのを覚えていた。

 

思い出したのだろうか「主将である渡辺がスランプになっていた時、『お前には、頑張る根性、やる気にさせる女子は居ないのかとか』そんな激を飛ばしたことがあったなぁ・・その時、聞いた名前が鈴木だった」

 

監督は生徒っぽく見える涼子本人より、制服を懐かしがって話してくるのだ。まだ来ない新井先生が気になっているのか、時計を見て心ここにあらずでいる。

 

(紫蘇の花)

「あ、そうか!、君か、野球部で話題にしてた女子だったか!すまん、思い出したよ」と、少し反応が遅い。

 

「いいえ昔の事ですから。向こうに居るのが滝口さんです」

 

「滝口弘美さん?あの松田が奮起した人!。知ってるよ、松田の "想い出の君" だからな、いろんな伝説がある。それで再会してるのかね。それは素晴らしい運命だね。ただ出会うのが遅かったかな」監督はまだ知らない・・弘美が自由の身になることを・・つづく