「小説すばる」5月号(先月号)『岳飛伝』 | 北方謙三『大水滸』から『チンギス紀』(「小説すばる」連載)へ

北方謙三『大水滸』から『チンギス紀』(「小説すばる」連載)へ

北方謙三『水滸伝』『楊令伝』『岳飛伝』関連から、月刊誌連載『チンギス紀』情報にテーマが移行しました。

ときどき、脱線してその他の作品、他の作者の小説の感想も入れます。まあ、冒険活劇、中心ですね。

テーマ:

明日6月号発売を前に、遅れましたが5月号報告。


穆に遭遇うて兩兩、晁に遇いて激激、楊に逢いて焔焔。

歳流れて、身に在るは、海潮の調、一觴の酒、鉄上の音。

青江黄塵赤海を奔りて、遮る者はなけれど、

復び立ちて、いま朋らの元へ急ぐ。


李俊がついに逝ってしまった。

場所は十三湊、側にいたのは王清だった。

今は王清が十三湊を仕切っているようだ。

108星中の生存者は、史進・顧大嫂・項充、そして病身の李立だけになる。


砂嘴の突端にある小屋で暮らし、砂嘴で遊ぶ子供たちを眺める暮らしで、

張朔が来ても、出撃させろとすら言わなくなっていた。

潟の筏で遊んでいた女の子が落とした木偶を取ろうと、

飛び込んだ少年が潟のなかの流れで外海に引っ張られたのをみて、

李俊は海に飛び込んだのだ。


岳飛・秦容の南宋進攻は本格化、

岳飛は程雲と直接の手合せ。

岳飛率いる動く3千五百と、各地の岳家軍が合流して都市を解放する戦略。

戦場になると轟交賈が止まることを恐れる秦檜の思惑、

埋伏好みの程雲の性格が重なり

対峙戦にはならない。


秦容は四川から揚子江に沿って東に進軍、

点を制する岳飛に対して、秦容は線で制することを目指す。

梁山泊の対金戦争をにらみながらの動きだ。

白帝城や夷陵といった三国志でおなじみの地名が登場する。


その他、

張朔、日本列島周回航路を実現しようと、

親潮にのって太平洋岸を南下、

九州沖の島伝い航路に出る補給基地として、

瓢の形をしていて、東西に二つの山がある島に目をつけるが、

島の形から伊豆諸島の八丈島だろう。

そこで、京を追われて来たとする漢語を解する日本人と出会う。

保元の乱で伊豆大島に流された源為朝は、八丈島で死んだという伝説もあるようだが、

時期的にちょっと無理か。

保元の乱は1156年、為朝は清盛と戦うのだ。

その後、張朔は炳成世=清盛とも遭遇している。


二人旅の韓順・蕭周材、梁山泊を訪れる。


秦檜、岳飛と秦容が南宋領内にいるうちに、

雲南からの許礼と、夏悦水軍で南を制圧を考える。

病いを得たらしく、やや焦り気味。

秦檜の病死は1155年のことだ。

http://mixi.at/a6Utegm  


年号 まだ1151

(季節の記述が見当たらない、「半月で巫山に達した」という秦容の言葉から今月号の時の経過はわずかと思われる)


初登場 趙光(景徳鎮の南宋守備指揮官で岳家軍に参加)

    鄒明(秦容軍で魏庸とともに4千を指揮)

    鄭建(巴蜀の岳家軍将校、2月号で名前だけ登場)


死者 李俊


5月号で第14巻分終わり、

史進・顧大嫂・項充の最後を描き、

岳飛のなんらかの死で『岳飛伝』は予告どおり15巻で終了、

「大水滸」の新伝に変わる可能性も強くなってきた。