第77期A級順位戦/6回戦「久保王将-阿久津八段、捌きのアーティストは泥臭く」
三が日も明けまして、本日は新年4日目。
今日から仕事始めという方も多いのではないでしょうか?
2019年も頑張って行きましょう!
将棋界の公式戦取組は8日からスタートしますが
新年最初のビッグマッチはもちろん、13日に開幕を控えます
第68期王将戦「久保利明王将-渡辺明棋王」の7番勝負。。
今回は3連覇を目指す久保王将の
直近の対局の模様をご紹介させていただきます。
2手目△3四歩。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: なし
△久保王将: なし
舞台は第77期A級順位戦。
12月5日に行なわれた阿久津主税八段との
6回戦を振り返ります。
本局の先手は阿久津八段。
その初手は飛車先を突く▲2六歩から。
いきなり居飛車を明示した先手に対し、久保王将は
2手目△3四歩と角道を開き、対局はスタート。。
5手目▲7六歩。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: なし
△久保王将: なし
続く3手目に、阿久津八段は飛車先を決め
後手に△3三角(4手目)の受けを強要してから
自らの角道を開きます。。
この手をみて、久保王将は。。
6手目△4ニ飛。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: なし
△久保王将: なし
飛車に手をかけ、4筋へと振り
角道オープン型の「四間飛車」に構えました。。
10手目△7ニ玉。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: なし
△久保王将: なし
戦型が「対抗形」に決まると
両者は息を合わせて居玉を解除し、玉の囲いを目指しますが
互いの玉を7筋まで移動した上図から次に、阿久津八段は。。
11手目▲3三角成。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 角
△久保王将: なし
12分の考慮の後
このタイミングで角交換を敢行しました。。
15手目△2三角。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: なし
△久保王将: 角、歩
角交換成立直後
阿久津八段はすかさず2筋の歩を突き捨てると
空いた2三のスペースへ手にしたばかりの角を投入。。
積極的に模様を動かし、攻防の主導権を掴みに行きます。。
この手に対し、久保王将は。。
16手目△2五角。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: なし
△久保王将: 歩
12分の考慮の後、前例を踏襲する形で
手持ちの角を先手の飛車先に投入、捌きに出ました。。
この手は想定の範囲内とばかりに
阿久津八段は4分の少考で▲同飛(17手目)と応じて
以下、△同歩~▲3四角成~△3ニ金~▲3六歩~△2ニ銀に
▲3五歩~△2七飛~▲3八銀~下図26手目▲2六飛成と進行。。
26手目△2七飛成。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 角、歩
△久保王将: 歩
角との交換で手にした飛車を
久保王将は機微に龍とし、2筋に拠点を作ります。。
一方、オリジナル角を馬にして3筋に拠点を築いた
阿久津八段は、手番の回った上図から次に。。
27手目▲5六角。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 歩
△久保王将: 歩
馬と重ねる形で手持ちの角を5筋に投入。。
積極的かつ攻撃的な模様を描き出します。。
42手目△7ニ銀。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: なし
△久保王将: なし
互いに大駒を起点に敵陣への圧力を強めますが
3筋の桂馬はもう助かる見込みのない久保王将は
上図の局面で、振り飛車の相棒「美濃囲い」を完成。。
しかし、次に阿久津八段が7筋の歩を伸ばし
玉のコビンから絡む動きをみせると(43手目▲7五歩)。。
46手目△6三銀。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: なし
△久保王将: なし
久保王将は歩を突いて(44手目△6四歩)
6筋の位で顔を利かす先手の角を追い払ってから
「美濃囲い」をブレークし、7筋を受けました。。
52手目△4五桂。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: なし
△久保王将: なし
局面が落ち着いたところで
久保王将は銀を7二の地点に引き戻し
再び「美濃囲い」を完成させますが、依然として
攻防の主導権は先手が握ったまま。。
このままでは2筋になった龍の行き場のなくなる
久保王将はどのみち助かる見込みのない桂馬を4筋へ
タダ捨ての跳躍で龍の脱出経路を強引にこじ開けます。。
70手目△1ニ歩。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 桂、歩4
△久保王将: なし
桂損と引き換えに、何とか龍は生き残ったものの
好所で躍動する先手の強力な二枚角を前にして
久保王将は我慢の時間を重ねます。。
77手目▲2四桂。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 歩3
△久保王将: 歩2
一方の阿久津八段は形勢リードを保ったまま
軽快に手をつなぎ、さらなるリード拡大を狙いますが
上図から次に、△2三金~▲1ニ桂成の進行で
悠長に香車を捕獲すると。。
88手目△4五歩。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 香、歩4
△久保王将: 歩3
手番の回った久保王将は中央から反撃開始。。
一瞬緩んだ先手の隙を逃すことなく、食いつきます。。
すると。。
102手目△6ニ銀。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 飛、歩5
△久保王将: 角、歩2
久保王将は
ずっと懸案だった龍を角との交換で捌くと
銀を引いて囲いに一枚足しつつ、飛車先を開くと。。
104手目△5七飛成。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 飛、歩6
△久保王将: 角、歩3
オリジナルの飛車がそのまま5筋を突っ走り
敵陣突破に成功し、反撃の残りを上げました。。
108手目△5五金。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 歩6
△久保王将: 歩3
依然として形勢をリードするも
久保王将の執念の前に思うように手が伸びない
阿久津八段に対して、久保王将は金をジッと前に出し
成ったばかりの龍と角の交換を持ちかけます。。
阿久津八段はこの注文に応じて、大駒の交換が成立。
直後に自陣4筋に歩を打ち、後手の角を利きを止めると。。
(111手目▲4七歩)
112手目△4八歩。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 飛、歩5
△久保王将: 角、歩2
すでに持ち時間を使い切り、1分将棋に突入した
久保王将は敵将の横に怪しく歩を垂らし、紛れを求めます。。
しかし、次に▲4八金と先手が上がれば
後手はほとんど打つ手なしでしたが。。
114手目△6九角。
上図での持ち駒
▲阿久津八段: 歩5
△久保王将: 歩2
久保王将の手練手管の指し回しに目が眩んだか
阿久津八段は敵陣に飛車を打ちおろし(113手目▲2ニ飛)
この瞬間、後手に待望の△6九角が実現しました。。
形勢の針が激しく揺れ動き
混沌とする中、最終盤戦の幕が開きますが。。
【 投了図・136手目△7九馬 】
投了図での持ち駒
▲阿久津八段: 飛、金、歩5
△久保王将: 歩
劣勢を耐えて掴んだ、千載一遇のチャンスを
久保王将は逃すことなく、先手玉をキッチリと打ち取り
上図の局面で阿久津八段は、無念の投了を告げました。。
終局時刻は午前0時36分。
華麗な捌きとともに持ち味であり大きな武器である
劣勢でも決して諦めない勝利への執念と正確な大局観で
久保王将は泥臭く、見事な逆転勝利をものにしました。。
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昨年の個人的将棋活動
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竜王戦/第7局終局直後の感想
竜王戦/第7局・一日目の所感。。
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名人相手に問答無用の圧勝。。
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王将戦で宿命の対決が実現。。
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今泉四段、待望の戦術書第三弾!
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谷川浩司九段は「光速流」
では、実兄・俊昭氏のキャッチフレーズは。。